1.股関節部の痛みの特徴
股関節疾患による痛みは,鼡径部,殿部,大転子部,大腿部に出現することが多い.しかし,股関節疾患であっても腰痛や膝関節部痛を主訴として受診する患者も存在する.また股関節周辺の疼痛だからといって股関節疾患のみが原因とは限らず,腰椎部疾患,腹部・骨盤部疾患,大腿部疾患,他臓器疾患や他科疾患の可能性を念頭において,診察を進めることが重要である.さらに股関節部の痛みが関節内由来であるか,関節外由来であるか,その両方かも考える必要がある.
2.診断手順
(図23-2図)
問診・診察にて発症の誘因や痛みの部位・性状を把握したうえで,考えられる疾患を列挙しつつ,画像検査や血液検査で所見を確認し確定診断を行っていく.
3.問診
まず,性別,発症時年齢,疼痛の部位,発症の誘因,疼痛が増強・誘発される動作や股関節肢位,スポーツ習慣の有無を含めた生活歴について聴取する.特に発症の誘因が想起される場合には,疼痛出現に至った経緯や受傷機転の有無を,どこが一番痛むのかとともに詳細に聴取する.
乳児でおむつ交換の際に激しく啼泣し発熱を伴う場合には,化膿性股関節炎を考える.乳幼児期の女児では発育性股関節脱臼,学童期の男児ではPerthes病,思春期の肥満の男児では大腿骨頭すべり症が多い.Perthes病では,大腿部痛や膝関節部痛のみを訴える場合もあり注意を要する.
青年期以後で,緩徐に股関節部痛が出現した場合には変形性股関節症を,高齢者で比較的急激に股関節痛を生じた場合は,大腿骨頭軟骨下骨折や急速破壊型股関節症を念頭におく.大腿骨頭軟骨下骨折では,詳細に問診を聴取すると軽微な外傷のエピソードを伴っている場合があり,また高齢者に限らず生じ得る疾患である.コミュニケ―ションが難しく外傷歴を聴取できない場合には,大腿骨頚部骨折を含めた骨折の可能性を常に念頭におく.外傷歴がなく安静時痛や夜間痛が
関連リンク
- 今日の救急治療指針 第2版/手指・足趾の外傷
- 今日の救急治療指針 第2版/膝の外傷
- 今日の整形外科治療指針 第8版/打撲,挫傷,捻挫
- 今日の整形外科治療指針 第8版/スポーツによる上腕の外傷・障害
- 今日の整形外科治療指針 第8版/肩関節の診察法
- 今日の整形外科治療指針 第8版/肘の痛みのとらえ方/診断手順
- 今日の整形外科治療指針 第8版/三角線維軟骨複合体 (TFCC) 損傷
- 今日の整形外科治療指針 第8版/膝蓋骨脱臼
- 今日の整形外科治療指針 第8版/ジャンパー膝
- 今日の整形外科治療指針 第8版/足関節・足部の診断
- 今日の診断指針 第8版/頚肩腕痛
- 今日の診断指針 第8版/大腿骨頭すべり症
- 今日の診断指針 第8版/膝・足部のスポーツ障害