【疾患概念】
急性~亜急性の片側股関節痛で発症し,6か月~1年以内に自然治癒する原因不明の疾患である.中年男性や妊娠後期女性に多い.病態は大腿骨頭の骨髄浮腫であり,骨萎縮を続発する.痛みに対する対症療法と,治癒までの期間中に骨折をきたさないような指導が必要となる.
【病態・臨床症状,発症機序,好発年齢】
原因は不明であるが,骨髄浮腫をきたす機序として微小骨折を含む外傷,静脈還流障害,閉鎖神経圧迫などの説がある.発症早期の痛みは強い.
問診で聞くべきこと
妊娠以外の危険因子として,外傷歴,飲酒や喫煙などの嗜好,ステロイド使用歴が知られている.職業などの情報も治療上必要となる.
必要な検査とその所見
(1)単純X線検査
発症1か月頃から,大腿骨頭の骨萎縮(骨輪郭の不鮮明化,骨の透過性亢進)が認められる.活動制限指示の要否や骨折合併の有無を確認するため定期的に行うが,骨萎縮所見は疼痛消失に遅れて徐々に正常化する.
(2)MRI
発症早期の診断には必須であり,大腿骨頭~転子部にかけてびまん性骨髄浮腫(T1低信号,STIR高信号)が特徴的である.関節液貯留も認める.
同様の病態を対側股関節や膝,足関節などにも生じることがあり(局所性移動性骨粗鬆症:regional migratory osteoporosis),疼痛部位に応じて画像検査を追加する.血液検査では異常を認めない.
鑑別診断で想起すべき疾患
大腿骨頭壊死症との鑑別が重要であるが,TOHにおける画像異常はびまん性である.すなわち,MRIでのT1低信号域は大腿骨頭壊死症のような帯状ではなく,STIRや造影における高信号域にも欠損部を認めない.骨シンチグラムでもcold in hotではなく,びまん性集積を認める.
CRPなどの炎症マーカーが高値であれば,化膿性股関節炎や関節リウマチなどの炎症性疾患の可能性を考える.
診断のポイント
強い股関
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