診療支援
治療

Femoroacetabular impingement(FAI)
大原 英嗣
(市立ひらかた病院 主任部長/下肢機能再建センター センター長〔大阪府枚方市〕)

【疾患概念】

 日常生活やスポーツ活動のなかで,寛骨臼もしくは大腿骨頚部における軽微な形態異常が原因で,両者が主に股関節前方で衝突することによって股関節唇損傷や関節軟骨障害を引き起こす病態をFAI(femoroacetabular impingement)と言う.寛骨臼前方の一部の出っ張りや臼全体的の後捻や過被覆から生じるpincer type,大腿骨頚部のくびれ減少や骨性隆起もしくは頚部の前捻角減少や内反股から生じるcam type,両者が併存するmix typeの3typeに分類される.無症状のものもあるが,発症するものはmix typeに多い.症状は股関節の疼痛や違和感として発症する.特にcam病変は,関節軟骨障害,それに次いで発生する変形性股関節症(osteoarthritis of the hip;OA)の誘因となることが知られている.

【臨床症状】

 自動車の乗り降りや階段の昇り,振り返りの際の急な痛み,長時間座位のつらさ,寝返り時の痛みなどを訴える.発症は15歳前後から60歳以上に及び,幅広く,スポーツ活動に影響を受け若年発症するものも多い.診察所見で特徴的なものは前方インピンジメントテスト,FABERテスト,抗SLRテスト(図23-14)などがある.歩行は問題ないことが多い.


問診で聞くべきこと

 開排,屈伸,寝返り,長時間の座位などの疼痛誘発動作,歩行時痛の有無,発症からの症状継続期間,職歴,スポーツ歴,外傷歴.


必要な検査とその所見

(1)単純X線検査

 本疾患のスクリーニング検査として必須.両股正面像,45°屈曲Dunn撮影(図23-15),false-profile撮影,頚部軸位撮影など.

(2)CT検査

 3D-CTや多断面撮像による徹底的な形状の精査がインピンジメント部位の把握に有用で,大腿骨頚部の骨硬化像や骨嚢胞(herniation pits)の存在も参考に

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