【疾患概念】
膝関節脱臼は,交通事故や高所からの転落といった高エネルギー外傷のほか,スポーツ外傷などで生じる.非常にまれな外傷とされているが,受傷時に脱臼したとしてもその多くは自然整復されることから,実際の発生率はさらに高いものと考えられる.単純X線で脱臼を認めなくても,多方向への不安定性を認める場合には,脱臼が生じた可能性を常に念頭におく必要がある.脱臼にはしばしば膝窩動脈損傷を伴うため,下肢の血流評価は必須である.
【膝関節脱臼の分類】
大腿骨に対する脛骨近位端の転位方向により,前方,後方,内方,外方,回旋脱臼の5型に分類される(図26-4図).前方脱臼が最も頻度が高く約40%に生じ,次いで後方脱臼が約30%に,以下,側方脱臼,回旋脱臼の順で生じる.転位位置による分類のほか,損傷された靱帯による解剖学的分類がある(複合靱帯損傷の項→,表26-2図参照).
【臨床所見】
特徴的な変形と運動制