【疾患概念】
外傷性の膝蓋骨脱臼は,頻度は高くないが時々スポーツ活動でみられる.初回脱臼は外傷性脱臼とよばれることもある.脱臼形態によって,反復性膝蓋骨脱臼,習慣性膝蓋骨脱臼,恒久性脱臼に分けられる.反復性膝蓋骨脱臼は,通常は整復されているが脱臼が複数回繰り返される状態で,習慣性膝蓋骨脱臼は屈曲するたびもしくは伸展するたびに脱臼する状態を指す.恒久性脱臼は常に脱臼した状態である場合である.また,生まれつきに脱臼している場合は先天性脱臼とよばれる.
問診で聞くべきこと
外傷の有無,受傷時の状況,下肢の肢位について確認する.また,同様の脱臼症状の有無について確認する.脱臼肢位としては膝外反が多いが,はっきりしない場合や軽微な機転で脱臼する場合も多い.同様のエピソードを繰り返している場合は,反復性膝蓋骨脱臼を疑う.
理学所見,必要な検査と所見
診察上は関節腫脹を伴うことが多い.初回脱臼の場合は関節穿刺にて関節内血腫を認める.膝蓋外方への不安定性があり,膝蓋骨を外方に軽く押すと恐怖感を誘発するapprehensionサインが陽性となる.膝内側の膝蓋骨内縁もしくは大腿骨内上顆近位から内側膝蓋大腿靱帯に沿って腫脹や圧痛を認める.急性期でない場合は,診察上,膝蓋骨が膝外方でトラッキングする動きを認めることがある.また,脱臼を起こしやすい素因として全身関節弛緩性,Q角増大などがある.画像検査は,単純X線の正面,側面像,膝蓋骨軸射像,CT,MRIが有用である.脱臼時には単純X線正面像では膝蓋骨の外方偏位を認めるが(図26-5a,b図),整復されると異常を認めないこともある(図26-5c,d図).膝蓋骨軸射像では外方傾斜や大腿骨滑車溝の低形成をしばしば認める(図26-6図).CTでは大腿骨滑車の低形成が同定しやすい(図26-8a図).MR軸射像で膝蓋骨や大腿骨外顆に骨挫傷を認める(図26-7図).