【疾患概念】
前十字靱帯は大腿骨に対する脛骨の前方変位を制動する靱帯であり,スポーツ活動の際に非接触性または接触性の受傷機転(下記)によって断裂することがある.前十字靱帯損傷後,切り返し動作や方向転換時に,膝がガクッと外れるような不安定性(膝くずれ,pivot shift)の症状を呈するようになる.また,前十字靱帯損傷は自然治癒が期待できず,若年症例やスポーツ活動を希望する場合,手術的治療が必要となる.
【病態】
主にサッカー,バスケットボールなどのスポーツ活動時に,急な方向転換や切り返しなどを行うと,膝関節には外反を主とした複合的な回旋外力が加わる.その力は関節内の前十字靱帯に伸長ストレスとして加わり,過度になると断裂を起こす.多くの場合,このように非接触性(non-contact)な受傷機転で発生するが,直接膝の外側から当たられ受傷する接触性(contact)損傷もまれではない.