【疾患概念】
前十字靱帯は大腿骨に対する脛骨の前方変位を制動する靱帯であり,スポーツ活動の際に非接触性または接触性の受傷機転(下記)によって断裂することがある.前十字靱帯損傷後,切り返し動作や方向転換時に,膝がガクッと外れるような不安定性(膝くずれ,pivot shift)の症状を呈するようになる.また,前十字靱帯損傷は自然治癒が期待できず,若年症例やスポーツ活動を希望する場合,手術的治療が必要となる.
【病態】
主にサッカー,バスケットボールなどのスポーツ活動時に,急な方向転換や切り返しなどを行うと,膝関節には外反を主とした複合的な回旋外力が加わる.その力は関節内の前十字靱帯に伸長ストレスとして加わり,過度になると断裂を起こす.多くの場合,このように非接触性(non-contact)な受傷機転で発生するが,直接膝の外側から当たられ受傷する接触性(contact)損傷もまれではない.
問診で聞くべきこと
受傷時のスポーツ,どのようなプレイをしていたか,接触の有無,pop音の有無,受傷後プレイ続行の可否,疼痛および腫脹の発生とその時期は聴取すべきである.陳旧性の症例では,受傷後の不安定性の発生回数や頻度,ひっかかり感やロッキングなどの他の症状も聴取しておく.
必要な検査とその所見
(1)Lachman test
膝関節軽度屈曲位(20~30°)で,脛骨を前方に引き出し,その際の前方変位量と制動された際の感触(endpoint)の2つを判断する徒手検査である.前方変位量が大きくなり,endpointが鈍い場合に陽性と判断する.この検査は感度が高い一方,特異度は決して高くない.
(2)pivot shift test
前十字靱帯損傷の主症状である,膝の不安定性(pivot shift)を再現するテストである.膝関節伸展位で外反と軽い内旋のストレスを加え,そのまま膝を屈曲させていく.約30°
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