診療支援
治療

有痛性分裂膝蓋骨
Painful bipartite patella
池内 昌彦
(高知大学 教授)

【疾患概念】

 膝蓋骨は,軟骨塊が幼児期から学童期にかけて骨化することによって発生する.複数の骨化核をもつものが骨性に癒合せず,線維軟骨性癒合になったものが分裂膝蓋骨である.成長期でスポーツ活動を行っているものに好発する.

【頻度】

 1~2%の頻度であるが,うち症状を有する者は2%にとどまる.約半数は両側性に分裂膝蓋骨を有する.

【病型・分類】

 副骨化核がみられる部位によって分けるSaupe分類が用いられる.タイプ1(5%)は膝蓋骨下極に,タイプ2(20%)は膝蓋骨外側に,タイプ3(75%)は膝蓋骨上外側に副骨化核を認める(図26-26).有痛性になるのはタイプ3が多いとされている.

【臨床症状】

 膝前面痛と副骨化核に一致した圧痛である.分裂部が隆起していることがある.


問診で聞くべきこと

 膝蓋骨骨折との鑑別に迷うことがある.外傷の有無やスポーツ活動と症状との関連性について問診しておく.


必要な検査とその所見

 X線検査(前後像と軸写)やCTにて分裂像を認める.MRIを撮像すると浮腫像を認める.


診断のポイント

 好発年齢が10~15歳の成長期である点と,いわゆる骨折急性期にみられる急性炎症所見に乏しい点が挙げられる.スポーツ動作に伴って悪化することが多い.


治療方針

 基本的に保存治療が適応となる.症状が軽い場合は,大腿四頭筋やハムストリングスのストレッチングや,運動後のアイシングなどを行う.一般にはスポーツ活動を休止し,消炎鎮痛薬の外用剤を処方する.症状の強い例では,2~3か月間の安静が必要になる.これらの保存治療を行っても,改善しない場合や繰り返す場合には手術が行われる.分裂した骨片の摘出,接合術などが行われる.Saupe分類タイプ3に対しては,外側広筋による牽引力を減じる目的に,同筋付着部の切離術が行われる.いずれの手術でも良好な術後成績が報告されている.




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