診療支援
治療

化膿性膝関節炎
Septic arthritis of the knee
立花 陽明
(埼玉医科大学 教授)

【疾患概念】

 化膿性関節炎のなかで膝関節は最も頻度が高い.感染経路は,わが国ではヒアルロン酸あるいはステロイド薬の注入に伴う関節穿刺による直接感染が海外に比べて多く,他に血行感染,関節周囲の感染巣からの波及,開放創や人工関節置換など手術によるものがある.また,超高齢社会を反映し,高齢であったり,糖尿病,肝・腎・心疾患,悪性新生物,ステロイド・免疫抑制薬の内服,関節リウマチ,変形性関節症および結晶性関節症などのリスクファクターとなる併存疾患を有していることが多い.起因菌としては黄色ブドウ球菌が多いが,菌が同定できないこともある.

【臨床症状】

 発熱し疼痛と局所の発赤・腫脹・熱感を伴い,膝蓋跳動が陽性で可動域が制限される.しかし,弱毒菌や高齢者,免疫不全患者では,局所の炎症症状に乏しいことがあるので注意する.


問診で聞くべきこと

 外傷やステロイド薬あるいはヒアルロン酸注入などの既往歴,併存疾患,薬物の内服歴や発症の時期について聴取する.


必要な検査とその所見

(1)血液・生化学検査

 白血球数が増加し赤沈値亢進,CRPおよびPCTが高値となる.

(2)関節液検査

 関節穿刺を行い,関節液中の白血球数と尿酸およびピロリン酸カルシウム結晶の検査とともに,塗抹染色と細菌培養に提出する.穿刺・吸引された関節液は,通常,黄色~黄白色調で混濁し粘性はやや低下している.白血球数が100,000/mm3以上,好中球数85%以上となる.

(3)単純X線検査

 初期には骨萎縮像のみのことが多いが,軟骨下骨の破壊や骨髄炎がないかなど骨病変の存在,さらに変形性関節症,軟骨石灰化症の合併に留意する.

(4)CT

 骨病変の拡がりを診断する.

(5)MRI

 関節液の貯留,関節軟骨および軟骨下骨の破壊,骨・軟部組織病変の有無に注意する.


診断のポイント

 発熱とともに臨床所見から診断は比較的容易であるが,炎症所見に乏しいことがあったり

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