【疾患概念】
槌趾変形では,ハンマー趾(hammer toe)と槌趾(mallet toe)に分けて考えられることが多い.ハンマー趾は近位趾節間(proximal interphalangeal;PIP)関節では屈曲し,遠位趾節間(distal interphalangeal;DIP)関節では伸展している変形である.一方,槌趾はDIP関節のみ屈曲している変形である(図28-10図).ハンマー趾に加えて中足趾節(metatarsophalangeal;MTP)関節の過伸展を合併したものを鉤爪趾(claw toe)とよぶ(図28-10図).
【病態】
女性に多い.サイズの小さな靴,ハイヒールやtoe boxの小さな靴を履くことで,MTP関節が背屈位矯正されるため,長趾伸筋や虫様筋が作用しにくくなり変形が生じると考えられる.中年以降ではplantar plateの損傷を合併しやすいことも一因と考えられる.また,単独で発症する場合もあるが,外反母趾,関節リウマチ,外傷が原因となることも多い.
鉤爪趾は,Charcot-Marie-Tooth病や二分脊椎などの神経筋疾患の凹足変形に合併して発症することが多い.ほとんどが両側性で,全趾に発症する.
【臨床症状】
槌趾では足趾先端やDIP関節の疼痛,胼胝形成がみられる.荷重時や歩行時に疼痛を生じる.ハンマー趾,鉤爪趾では,PIP関節背側の疼痛を生じる.またPIP関節背側や中足骨頭底側に,胼胝や潰瘍が形成される.特に靴を履くと,同部位が刺激され症状が増強する.
問診で聞くべきこと
疼痛の部位や出現する状況,使用している靴について確認する.また外傷歴の有無や,足趾変形をきたす疾患の有無を聞き出す.
必要な検査とその所見
変形の徒手整復ができるか否か,隣接関節の拘縮の程度を評価する.単純X線で関節症性変化や脱臼・亜脱臼の有無,外傷後では末節骨背側の骨折