【疾患概念】
内反小趾とは,第5趾先端が母趾側を向き(内反),その付け根(第5中足骨頭)が外側に迫り出す状態を指す.無症候例も少なくないが,有症状時は疼痛が主な症状となる.Bunionette(バニオネット),仕立て屋(tailor)が脚を交差する肢位でしばしば同部に胼胝を生じることからtailor's bunionとも称される.
【病態】
第5中足骨頭が外側に迫り出す骨性の要因として,第5中足骨頭外側の拡大,第5中足骨頭の外側への弯曲,第4中足骨に対する第5中足骨の過度の外反(第4第5中足骨間角の増大)が挙げられる.このような背景のもと,先の細い靴や足幅の狭い靴,ハイヒールを履くことで,突出する第5中足骨頭の外側(ときに底側にも)が圧迫され皮下に滑液包炎を生じ,その表層に有痛性の胼胝を形成することとなる.骨性の要因がない場合でも不適切な靴の使用で内反小趾を生じることがある.開張足による横アーチの崩れ,扁平足も内反小趾を発生する要因となる.しばしば外反母趾に合併する.なお内反小趾の発生頻度は明らかとはなっていない.男女差については,女性に多く発生する印象があるが,差はないとする報告もあり,一定の見解は得られていない.
問診で聞くべきこと
靴の選択,使用法は内反小趾の発生要因にも,また症状増悪因子にもなるので,普段あるいは過去にどのような靴を履いているか履いていたかを確認する.疼痛は靴を履いているときに生じるのか,裸足でも生じるのか,職業(内勤か外勤か),靴を履いている時間についても聴取する.
必要な検査とその所見
視診,触診で第5趾,第5中足趾節関節の形状と胼胝の位置,圧痛点,縦横アーチ構造の変化を確認する.単純X線足部背底像(荷重位),斜位像で第5中足骨頭の解剖学的特徴の有無,第5中足骨に対する基節骨の内反の程度を,側面像(荷重位)で縦アーチ構造の低下(扁平足)の有無を調べる.