診療支援
治療

陥入爪
Ingrown toenail
門野 邦彦
(五條病院 部長〔奈良県五條市〕)

【疾患概念】

 陥入爪は爪が皮膚軟部組織に食い込み,疼痛や創傷を生じる疾患である.爪甲が弯曲した「巻き爪」とは異なる病態だが合併していることが多く,並行して治療を進める必要がある.

【頻度】

 日常的によくみられる疾患だが,わが国における正確な統計はない.韓国の統計では,頻度は307.5人/10万人年,女性に多く,若年と高年齢の二峰性に好発するとされる.

【病型・分類】

 Heifetzの進行度分類が用いられる(図28-11).

 Stage1 発赤,腫脹期:趾尖の軟部組織に発赤と腫脹があり圧迫で疼痛を生じる.

 Stage2 創傷,滲出期:爪甲により側爪郭に創傷ができ出血や排膿を生じる.経過とともに創傷は深くなり潰瘍化するが,圧迫を避けるなどでいったん改善する.しかし容易に再発を繰り返す.

 Stage3 肉芽形成期:Stage2を繰り返すうちに,側爪郭に肉芽組織が増生し,爪甲はその中に埋もれ,その下では爪側縁部に潰瘍が形成される.Stage3は慢性化し自然治癒はまれである.


問診で聞くべきこと

 靴の刺激が原因となることが多いので,日常よく履く靴をチェックする.近年,歩行困難な施設入所者に発症する例が増えており,発症前に介護者が爪切りをしてないか確認する.


診断のポイント

 側爪郭に発赤,腫脹,慢性創傷,肉芽増生などを認めれば診断は容易である.皮下膿瘍を形成することもある.肉芽組織に埋もれた爪甲縁が棘状に変形していることがあるので確認を要する.外反母趾では,母趾が回内し爪甲側縁に体重がかかる状態となる.この刺激が原因になっていることがある.


治療方針

 軽症では靴の変更,圧迫の解除,爪甲縁と軟部組織の間にコットンなどを詰めることで改善する.進行した例では,物理的に爪甲を持ち上げて軟部組織への刺激を解除する方法が有効である.近年各種の爪甲矯正器具が開発されている.ワイヤーやフックで爪甲を持ち上げる

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