【疾患概念】
二分靱帯は踵骨前方突起を起始としたV字形の靱帯で,踵舟靱帯と踵立方靱帯の総称である.足関節内反捻挫時に損傷することが多い.両靱帯とも1cm幅,2cm長程度の短い靱帯であるが,特に踵舟靱帯は非常に強靱であるため,受傷時に靱帯の単独損傷を起こすことはまれで,靱帯付着部である踵骨前方突起の(剥離)骨折を伴うことが多い.
【臨床症状】
足関節外果よりやや遠位前方に腫脹と疼痛を認める.踵骨前方突起の骨折を伴うため,同部位の皮下出血が特徴的である.疼痛は受傷後より徐々に強くなり,歩行困難となることも多い.
問診で聞くべきこと
受傷機転(肢位)の確認が重要で2つ存在する.1つは足関節の底屈・内がえしによる受傷であり,もう1つは足関節過背屈での外転強制による受傷である.足関節内反捻挫受傷時には本傷害を念頭に置くべきである.
必要な検査とその所見
圧痛点の確認が重要である.足関節外果先端より1cm下方,3~4cm前方にある踵骨前方突起に強い圧痛を認めれば,本傷害と診断できる.骨折を伴っていれば,単純X線撮影でも診断が可能であるが,正面および側面像の2方向では周囲の足根骨と重複しているため判断しにくく,踵骨前方突起の描出に優れている斜位像で確認するほうがよい.骨折の評価が容易であるCT撮影が本傷害でも有用とされ,微小な剥離骨折も確認することが可能となる.近年では超音波エコーで,靱帯損傷および骨折の有無が併せて確認できる.
診断のポイント
①足関節内反捻挫に伴う外傷であり,見逃されることも多いため注意する.
②強い底屈での内がえしによる受傷機転と足関節外果より遠位前方の腫脹,皮下出血,圧痛点により本傷害を積極的に疑う.
③単純X線では足部斜位像を追加して確認するべきである.CTおよび超音波が非常に有用である.
治療方針
骨折の有無,骨片の大きさによるが,基本的には保存療法が第1選択となる.疼痛が軽
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