診療支援
診断

小児の脱水
Hypovolemia Dehydration in Children
香美 祥二
(徳島大学教授・小児科学)

緊急措置

【1】脱水とは体液量(細胞内・外液量)が欠乏している状態であり,特に細胞外液の主成分である水とナトリウム(Na)が欠乏している状態を指す。

【2】小児は成人に比し体液量の割合が高く,自分で水分がとれない場合(新生児,乳児)は容易に脱水症に陥る。

【3】重症例では循環血液量が低下し低血圧,頻脈,意識混濁症状(ショック状態)などが現れる。この場合には血管を確保し,細胞外液の組成に近い乳酸リンゲル液または生理食塩液(等張液)(100mL/kg)による急速経静脈輸液を行う(表1)。

診断のチェックポイント

❶病態理解:血清Na値に基づく脱水の種類を知り,病態に応じた補正のスピードを考慮し輸液療法を行う。

等張性脱水(血清Na 130~150mEq/L):水と電解質〔(Na,カリウム(K)〕が均等に失われたもので,ほとんどの脱水症がこれにあたる。

低張性脱水(血清Na <130mEq/L):嘔吐や下痢があっても,水などの低張性のものを大量にとっている場合(水中毒),不適切な低張性輸液を受けている場合,血清浸透圧低下に見合わない抗利尿ホルモン(ADH)分泌がある場合(ADH不適合分泌症候群:SIADH)の脱水である。水が細胞外から細胞内へ移動するため脱水症状はより顕著になる。等張性,低張性ではぐったりとして傾眠傾向であり,重症では昏睡,けいれんを引き起こす。

高張性脱水(血清Na >150mEq/L):嘔吐や下痢が大量で頻回になると体液より低張性のものが失われる。嘔吐,下痢や発熱を伴う感染症などで水分を経口摂取ができない場合は結果として高張性脱水となる。うとうとしているが触れられると過敏に反応し(易刺激性),不穏,興奮状態となる。

❷診断評価:体重減少の推定と理学的所見により脱水の程度を評価する。

脱水の程度は,体重に対する体液喪失の割合で表し,軽度,中等度,重症と分類している(表2

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