診療支援
診断

好酸球増多
Eosinophilia
前川 洋一
(岐阜大学教授・寄生虫学・感染学)

緊急処置

 末梢血中の好酸球が2,000/μL以上の著明な増加を呈し,心臓,肺,消化器,腎臓などの臓器の障害が強く疑われる場合には入院のうえ精査を行う。ステロイド投与などの緊急処置が必要な場合がある。

診断のチェックポイント

定義:末梢血中好酸球数が500/μLあるいは白血球の5%以上に増加した状態を好酸球増多とよぶ(表1)。好酸球増多をきたす疾患について鑑別するために,以下の診断ポイントに留意する。好酸球数の増加は全身または局所の炎症性障害の存在を疑わせるので,その状態を判断するための情報収集を行う。

【1】病歴

❶アレルギー疾患の可能性について確認

アレルギーの既往の有無(気管支喘息,アトピー性皮膚炎,食品・薬剤アレルギーなど),家族歴を確認する。

原因となるアレルゲンとの接触の有無,生活環境中に原因アレルゲンが存在する可能性についても聴取する。

❷寄生虫感染の可能性について確認

流行地への渡航歴,生肉・生魚の嗜好,有機農法野菜などの摂食,ゲテモノ食いなどについて尋ねる。

幼虫移行症を思わせるエピソード(移動性皮膚線条や皮下腫瘤など)を聞く。虫卵や幼虫に汚染された土壌などとの接触(砂場,海水浴場など)などについても丁寧に問診する。

❸最近の易疲労感性,発熱傾向,易感染傾向などを聞く。

【2】身体所見:全身の視診,触診,聴診などを慎重に行い,好酸球増多を伴いやすい皮膚疾患の所見や臓器障害の可能性について注意深く観察する。自己免疫疾患が強く疑われる場合には,その所見について観察する。

❶全身所見として紅斑・湿疹などの皮膚所見,咽頭粘膜や結膜の所見,関節所見,全身・局所の炎症の有無。

❷心音,呼吸音の異常。

❸神経系の異常。

【3】検査:好酸球増多があることを確認したうえで,白血球数,IgE,CRP,BUN,クレアチニン値などに異常がないかを調べる。

❶血液検査:アレルギー疾患については好酸球数と

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