診療支援
診断

脳卒中
Stroke
上坂 義和
(虎の門病院・脳神経内科部長)

診断のチェックポイント

【1】病歴:一刻を争う場面が多いが最低限下記の項目は確認する。

❶発症時期:症状は突然発症し完成したのか,進行があるのか。アルテプラーゼ静注療法(以下,rt-PA療法)適応判断で未発症確認時刻からの時間は必須である。

❷けいれんの有無:けいれん後の意識障害,Todd麻痺が脳卒中として搬送されることは少なくない。

❸胸部痛,背部痛の有無:時に大動脈解離や急性心筋梗塞に脳梗塞が合併する。前者はrt-PA療法禁忌である。

❹頭痛の有無:くも膜下出血,動脈解離の可能性を念頭におく。独歩来院症例,若年者においてくも膜下出血の見逃し例が多いことが報告されている。20~30%で頭痛の程度が軽く,項部硬直も明らかでないことが多い。

❺既往歴:脳卒中,心疾患,不整脈,高血圧,糖尿病,脂質異常症,悪性疾患の既往についてはできるだけ確認する。

❻常用薬

抗血小板薬,抗凝固薬は必ず確認する。その他の内服薬も可能な限り確認する。

ビグアナイド系経口糖尿病薬内服例でのヨード造影剤使用は乳酸アシドーシスのリスクから禁忌とされている。血栓回収療法を行わざるを得ない症例では事前にリスクを説明しておく必要がある。

若年脳卒中では違法薬物の可能性も念頭におく。

【2】身体所見

❶Japan Coma Scale,Glasgow Coma Scale,NIH stroke scale:最低限これらは記載されている必要がある。

❷血圧左右差の有無,心雑音の有無:大動脈解離の診断において感度は高くないが記載は必要。

❸共同偏視と向き:共同偏視は主幹動脈閉塞例に多く,血栓回収療法も念頭において迅速に準備する。通常の脳卒中と逆に麻痺側へ向く共同偏視例ではTodd麻痺のことがしばしばある。

【3】検査

❶一般血液検査:血糖,血算はrt-PA療法の適応にかかわってくる。抗凝固薬を内服しておらず,重篤な肝疾患などの既往がなければ

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