診療支援
診断

睡眠障害(不眠症・過眠症)
Sleep Disorders (Insomnia and Hypersomnia)
内山 真
(日本大学教授・精神医学)

[Ⅰ]不眠(睡眠困難)

診断のチェックポイント

定義

❶不眠症とは,夜間に眠るために寝床で過ごしているにもかかわらず,夜間の睡眠困難があり,これにより日中に生活の質(quality of life:QOL)の低下がみられる状態である。

❷DSM-5では,夜間の睡眠困難としては,入眠困難,睡眠維持困難(中途覚醒),早朝覚醒,日中の苦痛や機能障害をもたらす状態が,1週間に3夜以上の頻度で,3か月以上続く症候群として定義される。

【1】病歴

❶夜間の睡眠困難を適切な診断に結びつけるには,「眠れない」という睡眠困難の訴えをより具体的に,症状として把握する。すなわち入眠困難,睡眠維持困難,早朝覚醒,休息感欠如について問診し,発症時期および頻度を具体的に確認する。

❷患者の睡眠習慣について,睡眠時間だけでなく,就床時刻や起床時刻を確認する。

❸精神的ストレスが契機となって,入眠困難や睡眠維持困難が生じ,次第に眠れないことに対する恐怖やこだわりが強くなることで,慢性化することがある。

❹本人の退職や家族の生活環境の変化により,早い時刻から就床するようになると入眠困難が起こりやすく,寝床で長く過ごすようになると浅眠感や中途覚醒から,睡眠維持困難をもたらす。

❺健常人における夜間の実質的睡眠時間は,25歳で7時間,45歳で6.5時間,65歳で6時間程度である。

❻男性では,中年期から生理的に早寝早起きの傾向が強まり,極端な場合には早朝覚醒が生じる。

【2】身体所見:不眠症において特徴的な身体所見はないが,後述の鑑別すべき疾患では,観察しうる身体所見を示すものがある。

【3】検査:不眠症の診断は,基本的に主観的な訴えに基づいて行われる。鑑別診断のために,終夜睡眠ポリグラフ検査が行われることがある。

原因疾患と頻度

【1】わが国および世界における成人一般人口を対象とした疫学調査によれば,成人の約20%が夜間の睡眠困難(不眠

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