緊急処置
リンパ管腫などで,出血,感染により急速にサイズが大きくなり,咽頭内腔へ突出する場合,緊急気道確保が必要になることがある。
診断のチェックポイント
●定義
❶側頸部とは,胸鎖乳突筋前縁より僧帽筋前縁までの範囲である。側頸部囊胞性病変の頻度は必ずしも多くはないが,胸鎖乳突筋の下には頸動脈・静脈,その周囲のリンパ節,迷走神経,副神経,交感神経,頸神経などが走行しており,多様な疾患が原因となる。
❷側頸部腫瘤は,1)炎症性,2)先天性,3)腫瘍性に大別できる。このなかで囊胞を呈するものには,感染・炎症性疾患に伴うリンパ節腫大,先天性囊胞性腫瘤,リンパ管腫,悪性腫瘍のリンパ節転移などがある。発症年齢・病歴,部位,視診によりある程度診断がつくことが多い。
【1】病歴
❶いつ気づいたのか,大きさに変化があるか:乳幼児期からであれば,先天性疾患のことが多い(→側頸囊胞,リンパ管腫)。時間経過で大きさに増減がある場合,内部への出血や感染の合併が疑われる。
❷感染の徴候・既往,結核の病歴はないか:圧痛,発熱,皮膚の発赤,膿汁分泌があれば,感染性疾患,先天性疾患の感染を疑う。結核性リンパ節炎でも類似の所見を示すが疼痛は乏しい傾向にある。
❸病変の左右,両側性か:先天性側頸部囊胞では一側性が多い(→下咽頭梨状窩瘻では90%以上が左に生じる)。両側性の場合,感染・炎症性疾患に伴うリンパ節腫大,リンパ節転移などが疑われる。
❹家族歴:側頸囊胞の家族歴に加え,難聴,外耳奇形,腎奇形があれば遺伝性疾患〔→鰓耳(branchio-oto:BO)症候群,鰓耳腎(branchio-oto-renal:BOR)症候群〕が疑われる。常染色体優性遺伝形式をとる。BO/BOR症候群では側頸囊胞・瘻孔は両側性のことが多い。
❺頭頸部悪性腫瘍の既往,側頸部腫瘤以外の症状:咽頭違和感,嗄声がある成人では,悪性腫瘍のリンパ節転移が疑われ