診療支援
診断

こむら返り
Calf Cramp
荒若 繁樹
(大阪医科大学教授・脳神経内科)

緊急処置

【1】筋を伸展させる:こむら返りが生じた筋をゆっくり受動的に伸展させる。腓腹筋にこむら返りが生じた場合は,膝を伸展させた状態で足関節を徐々に背屈させる。

【2】補水:痛みが軽減したら軽くマッサージを行い,脱水や電解質異常を考慮し,適宜経口補水液などを摂取する。

診断のチェックポイント

定義:不随意に起こる骨格筋の有痛性けいれんである。こむら返りは腓腹筋(こむら)に生じるcrampを指すが,他の骨格筋で起きた場合にも使われる。

【1】病歴

❶どのような状況でどこに生じたか:ほとんどの良性のものは,運動中,運動後,睡眠中(高齢者に多い)に生じる。腓腹筋以外に大腿,足底部,背部,腹筋,上肢に生じることもある。

❷誘因はないか:筋肉の疲労,脱水および電解質異常を誘因とすることが多い。

❸一過性か:典型例では突然痛みが生じ,数秒から数分間持続する。反復することもある。持続時間が長い,誘因を認めない,複数部位に出現する,家族歴を有する場合は基礎疾患を疑う。

❹基礎疾患の有無:電解質異常(低カリウム,低マグネシウムなど),末梢神経障害,腎不全,肝硬変,甲状腺機能低下症など。

❺薬剤性の可能性:スタチン系薬剤,カルシウム拮抗薬,β遮断薬,利尿薬の内服歴。

【2】身体所見

❶筋が硬く収縮し,膨隆する所見から診断は比較的容易である。

❷こむら返り以外の症候の合併があるか

発汗,意識障害(→熱中症)。

浮腫(→甲状腺機能低下症,腎不全,肝硬変)。

口唇・四肢のしびれ感(→テタニー)。

筋力低下,筋萎縮,線維束性収縮(→筋萎縮性側索硬化症,球脊髄性筋萎縮症)。

【3】検査

❶血液検査:電解質(ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム),腎機能,肝機能,耐糖能,甲状腺機能,副甲状腺機能,副腎機能。

❷画像検査:脊椎MRI(→神経根障害)。

❸電気生理学的検査:神経伝導検査,筋電図(→末梢神経障害,筋萎縮性側索硬化症

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