診療支援
診断

粘血便
Mucobloody Stool
久松 理一
(杏林大学教授・消化器内科学教室)

診断のチェックポイント

【1】病歴

❶粘血便はいつから始まったか,きっかけになったエピソードはあるか?

慢性の経過,再燃寛解の繰り返し〔→炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎>Crohn病)〕。

ある日を境に急に(→潰瘍性大腸炎の初発,感染性腸炎)。

❷下痢を伴うか伴わないか?

有形便に粘液や鮮血が付着する〔→S状結腸・直腸癌,寛解期の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎>Crohn病)〕。

下痢を伴っている〔→炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎>Crohn病),感染性腸炎,赤痢アメーバ,時に大腸癌〕。

❸症状の強い時間帯:朝方~午前中にトイレに行く回数が多い(→潰瘍性大腸炎)。

❹腹痛を伴うか:左下腹部の排便時の痛み〔→炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎>Crohn病)〕。

❺海外渡航歴,食事摂取歴,性交渉歴(赤痢アメーバが疑われる場合)を聴取する。

❻炎症性腸疾患でも直腸~S状結腸に炎症を有する潰瘍性大腸炎のほうがCrohn病よりも粘血便を生じやすい(潰瘍性大腸炎>Crohn病)。

【2】身体所見

❶体温:発熱を伴う(→感染性腸炎,赤痢アメーバ,重症の潰瘍性大腸炎,Crohn病)。

❷貧血はあるか:眼瞼結膜の貧血(→炎症性腸疾患,大腸癌)。

❸腹部圧痛(左下腹部痛)

左下腹部痛〔→炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)>感染性腸炎〕。

感染性腸炎は深部大腸に所見が強いことが多い。

❹関節症状や皮膚所見:関節痛や結節性紅斑(→炎症性腸疾患,感染性腸炎)。

【3】検査

❶画像検査

必須:下部消化管内視鏡検査。

直腸から連続するびまん性の粘膜の炎症(図1)(→潰瘍性大腸炎)。

縦走潰瘍,敷石状外観,skip lesion(図2)(→Crohn病)。

直腸,盲腸に好発する汚い白苔や粘液を伴ったタコいぼ状隆起,びらん,潰瘍(図3)(→赤痢アメーバ)。

易出血性の隆起性病変(→進行大腸癌)。

重症度,必要性に応じて

1)単純X線検査

・左側大腸のハウス

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