診療支援
診断

肝腫大
Hepatomegaly
北本 幹也
(県立広島病院・消化器内科部長)

緊急処置

 肝腫大のみであれば,緊急対応は不要である。胆道閉塞に伴った急性胆管炎,肝不全徴候を呈する各種肝疾患,出血や破裂を伴う肝腫瘍,肺動脈塞栓,右心不全の急性増悪,急性Budd-Chiari症候群などは緊急対応が必要になる。

診断のチェックポイント

定義:肝腫大は肝容積の異常な増加のことである。右鎖骨中線上で打診し,肝濁音界の上縁と下縁を同定し,その肝縦径が12cm以下なら正常とみなし,12cm以上で肝腫大とする。触診で肋弓下の肝下縁を2cm以上触知する場合に肝腫大を疑う。

【1】病歴:発熱,腹痛,倦怠感,息切れ,尿濃染,飲酒歴,薬物服用歴,体重変動(現在,その人にとっての最高値,20歳台前半の少なくとも3点を聴取するとよい),肝疾患の家族歴などを聴取する。

【2】身体所見:触診の手順は以下のとおり。

❶まず腹部全体を浅い触診でくまなく観察する。

❷軽く腹壁に手を置き深呼吸を促し,腹壁の上がる分だけ手が沈む感覚で指先を腹壁に当て,1cm以上圧迫しないよう注意して触診する。腫瘤や腫大した肝を触知しやすいよう,浅い触診を心がける。

【3】検査

❶画像診断

腹部超音波検査あるいはCTとの対比で,自分が認めた肝腫大の所見を確認しておくことが重要である。特に超音波は容易に携行可能な非常にコンパクトな機種が発売されており,触知した部位にプローブを当てれば,それが肝臓かどうかの確認は容易である。それが胆囊なら無痛性胆囊腫大(Courvoisier sign)の可能性がある。

超音波検査にて,肝内の腫瘤,胆道系の拡張,肝静脈・下大静脈の拡張などの所見を認めることも容易である。

❷血液検査

IgM-HA抗体,HBs抗原,HCV抗体の肝炎マーカーは必須と考えられる。炎症反応を伴う肝障害では胆管閉塞機序による肝腫大の可能性が考えられる。

腫瘍性を考慮する場合には,AFP,PIVKA-Ⅱ,CEA,CA19-9な

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?