診療支援
診断

排尿困難
Difficulty Urination/ Voiding
皆川 倫範
(信州大学講師・泌尿器科学教室)

緊急処置

【1】尿閉:排尿が不能ないし不十分で,膀胱内に多量の尿が溜まった場合,緊急の導尿あるいは尿道カテーテルの留置が必要である。可能な限り超音波検査を行い,膀胱内に多量の残尿(300mL以上が目安)があることを確認する必要がある。

【2】尿路感染症:排尿困難により複雑性尿路感染症となる場合がある。多量の残尿を伴う有熱性尿路感染症ではドレナージを検討する。

診断のチェックポイント

定義

❶本来,排尿・蓄尿にかかわる症状は下部尿路症状としてまとめられる。そのうち,排尿困難・尿線途絶・腹圧排尿といった尿排出にかかわる症状を排尿症状とし,頻尿・尿意切迫感・失禁といった蓄尿にかかわる症状を蓄尿症状として扱う。

❷従来から使われる排尿障害あるいは排尿困難という語は,狭義の排尿症状・蓄尿症状を包括した広義の症状として取り扱うのに用いられる場合がある。本項では,広義の排尿困難として取り扱う。

【1】病歴

❶排尿困難は男性と女性で病態が大きく異なる。また,経過が慢性か急性かでも病態が異なる。

❷神経因性膀胱の背景となりうる疾患の既往を確認する(糖尿病,脳梗塞,骨盤内手術など)。

❸飲酒・薬剤既往を確認する。

❹各種問診票を用いると症状の把握が容易である〔国際前立腺症状スコア(IPSS),過活動膀胱症状スコア(OABSS)など〕。

❺他の症状(発熱,血尿,排尿時痛)など,感染や悪性腫瘍の存在を示唆する症状や所見を伴うか確認する。

【2】身体所見

❶直腸診

前立腺肥大症の場合:腫大した前立腺を触れる。

急性前立腺炎の場合:熱感と圧痛を認める。

前立腺癌の場合:硬結を触れる。

神経疾患の場合:知覚の低下と肛門括約筋トーヌスの低下などを認める。

【3】検査

❶検体検査

必須:尿検査。特に尿沈渣で血球成分を評価し,尿路感染症の有無を確認する。

可能なら:血液検査。高度の排尿障害であれば腎機能を評価する。50歳以上の男性であれば

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