診断のポイント
【1】気道閉塞(airway:A)と大量出血(circulation:C)のコントロールが重要。
【2】気管切開,動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE),顎間固定が緊急で実施されることがある。
【3】AとCの管理がなされれば,骨折の治療は2週間内でよいことがほとんどである。
【4】感覚器損傷の有無を必ず評価する。
【5】整容的な問題点も考慮する。
緊急対応の判断基準
【1】口腔粘膜,鼻腔粘膜ともに血流が豊富であり,高度な顔面損傷は大量出血をきたし,直接咽頭・喉頭に流入しやすく,気道確保を要する。意識障害合併例や,TAEなどの止血操作を要するときは躊躇なく確実な気道確保を行う。
【2】気道確保:経口気管挿管が原則となるが,口腔内止血操作を要する症例,顎間固定を要する症例,意識障害合併症例などでは,初期に気管切開を実施する。緊急で輪状甲状靱帯穿刺・切開を実施する用意もしておく。
【3】圧迫止血:0.9~1.6%で致死的大量出血をきたすことがある。必要に応じて後咽頭まで進めたバルーンカテーテルを引き上げて後方から圧迫し,前方からガーゼやスポンゼル®で圧迫止血を実施する。
【4】TAE:画像にて外頸動脈からの分枝に血管外漏出像が確認される場合は,TAEを実施する。
症候の診かた
【1】「外傷初期診療ガイドライン」に基づき,まずはprimary surveyとして生理学的な安定性を評価し,顔面外傷では特にAとCに注意を要する。
【2】顔面外傷は視診で明らかであることが多いが,頭部外傷や頸椎損傷の合併も懸念して,意識(dysfunction of CNS:D)の評価,頸椎の保護に加え,頸椎損傷に伴う腹式呼吸や四肢麻痺の有無を評価する。
【3】生理学的安定性が得られていれば,secondary surveyとして,腫脹・変形,外出血・皮下血腫,開