診療支援
診断

溺水
Near Drowning
松田 潔
(日本医科大学武蔵小杉病院救命救急科・教授)

診断のポイント

【1】発症時の状況:顔が水面に浸かっていたかどうか。

【2】酸素化障害がある。

【3】胸部聴診にてcracklesが聴取される。

【4】先行する疾患への注意を怠らない。

緊急対応の判断基準

【1】心肺停止の有無:心肺停止ならば,心肺蘇生をすみやかに開始し,高次救急医療機関への転送を考慮する。

【2】重篤な呼吸障害の有無:SpO2の低下があれば酸素投与を開始し,改善しなければ気管挿管,高次救急医療機関への転送を考慮する。

症候の診かた

【1】意識障害:Glasgow Coma Scaleで評価する。

【2】呼吸障害:呼吸数,SpO2,呼吸音聴診により酸素化障害を評価する。

【3】血尿:淡水溺水では,溶血に伴う血尿を認めることがあるが,臨床で問題になることは少ない。

検査所見とその読みかた

【1】動脈血液ガス分析:PF ratio(PaO2/FIO2)の低下。

【2】胸部画像検査:X線写真,CTにて気道内の液体,両側肺野の浸潤影。

確定診断の決め手

【1】溺水を起こしたと考えられる発症状況。

【2】酸素化障害を主とする呼吸障害。

【3】胸部画像の異常浸潤影。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

 溺水の原因として,単純な事故のほかに自殺や先行する疾患が存在することがある。成人溺水の場合は,以下を合併している頻度が多い。

【1】急性アルコール中毒:泥酔後の入浴が溺水を招来することがある。血中アルコール濃度の測定により鑑別できる。

【2】ヒート・ショック:高齢者の寒冷期の入浴中に意識障害を生じ,溺水となる例が多い。浴槽内外の温度差と高齢者の温度変化対応能力低下が原因と考えられている。

合併症・続発症の診断

【1】二次溺水:溺水発生直後に症状が生じないが,遅延して溺水症状が出るものを二次溺水とよぶ。肺水腫や誤嚥性肺炎が原因である。

【2】低酸素脳症:意識障害が遷延する場合は,低酸素血症に続発した脳症を考える。

予後判定の

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?