診断のポイント
【1】全身被曝
❶高線量被曝事象(短時間に>1グレイ)
❷上記以外では説明困難な以下の症候
■被曝後約6時間以内に前駆症状(悪心・嘔吐,頭痛,下痢,発熱)が発生。
■潜伏期(前駆症状が一時的に回復する2週間程度の無症状期間)の存在。
■血球数(特にリンパ球数)が数日以内に著明減少。
■末梢血リンパ球染色体異常(二動原体染色体,環状染色体)が数時間以内に出現。
■被曝後2週目以降に出現する多臓器障害。
【2】局所被曝
❶高線量被曝事象(短時間に>8グレイ)
❷初期の皮膚紅斑(数時間~数日出現後一時的に消失)。
❸潜伏期(1~2週間の無症状期間)の存在。
❹被曝後2週以降に出現する局所組織変性。
症候の診かた
被曝が全身か局所かで以下に分類される。
【1】急性放射線症候群(acute radiation syndrome:ARS):全身被曝で生じる多臓器不全症候群。4つのsubsyndromeとして1)造血器症候群,2)消化器症候群,3)中枢神経症候群,4)皮膚症候群に細分類される。造血器症候群の閾値(1%の確率で臓器障害が発生する放射線量)はおおむね1グレイ以上である。
【2】Localized radiation injury(LRI):局所被曝では紅斑・水疱・潰瘍・壊死が皮膚・骨軟部組織に線量依存性に発生する(表1図)。潰瘍壊死は難治性で高度疼痛を伴う。多臓器不全症状は呈さない。
検査所見とその読みかた
下記【1】【2】,および被曝後の嘔吐出現時間から,被曝線量を推計し,治療法選択と予後予測を行う(表2図,3図)。
【1】末梢血血液検査:血球数(特にリンパ球数)の急速著明な減少を認める(図1図)。
【2】末梢血リンパ球染色体検査:二動原体染色体などの異常が出現する(表2図)。
【3】その他:血清アミラーゼ値(唾液腺)上昇,CRP上昇。
確定診断の決め手
【1】高線量被曝事象。
【2】末梢血リンパ球染色