診断のポイント
【1】細胞性免疫の低下を背景とする。基礎疾患は従来,血液系悪性腫瘍やHIV感染症が多かったが,最近は抗体医薬(生物由来製品)投与によるPMLが多発している。
【2】診断は症候,頭部MRI,脳脊髄液のJCウイルス(JCV)DNAの検出,脳生検所見,除外診断を柱とする(表1図,2図)。
症候の診かた
【1】症候は認知機能障害,構音障害,片麻痺が多く,小脳症状,失語,精神症状などがそれに続いている。
【2】無治療の場合,日や週の単位で進行して無言・無動に至るが,適切な治療介入により進行が停止する例がある。
検査所見とその読みかた
【1】頭部MRI
❶大脳を主体に皮質下白質の大小不同・癒合した不整形の病巣が多発性にみられる。
❷T2強調画像やFLAIR画像はPML病巣の検出に優れており,拡散強調画像は急性期の活動性PML病変の検出に有用である。
❸PML治療中に病変にmass effectや造影剤増強効果が出現した場合は,免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS)発症を示唆する。
❹多発性硬化症治療薬ナタリズマブに関連するPMLでは,無症状でPMLの脳MRI所見が見いだされることがある。
【2】ポリメラーゼ連鎖反応(PCR):脳脊髄液中のJCV DNAのPCRを行う。高感度かつ定量的なリアルタイムPCRが有用である。
【3】脳生検:経過,症候,画像でPMLが疑われるにもかかわらず,脳脊髄液PCRでJCV DNAが検出されなかった場合,脳生検を検討する。
確定診断の決め手
【1】臨床症候や画像所見でPMLが疑われ,脳脊髄液のPCRによるJCV DNA検出にて陽性の場合,臨床的にほぼ確実(probable)と診断する。陰性でもPMLの蓋然性が高い場合は脳生検を考慮する。
【2】臨床,画像および脳脊髄液所見による診断基準を表1図に
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