診療支援
診断

脊髄腫瘍
††
Spinal Cord Tumors
遠藤 俊毅
(東北大学講師・脳神経外科)

診断のポイント

【1】進行性の脊髄神経症状を呈する場合,脊髄腫瘍の可能性を念頭におく。

【2】脊髄腫瘍における神経症状の進行は数か月,時に数年にわたる。ただし,転移性腫瘍では,急速に症状が進行する場合がある。

【3】脊髄神経症状により病巣の高位・横断面診断を行い,脊髄MRIによる診断確定を期す。

緊急対応の判断基準

【1】脊髄腫瘍を疑った場合は,脊髄外科専門の医師がいる施設への紹介を検討するべきである。

【2】脊髄腫瘍手術後の神経症状の回復は,手術前の神経症状が軽度であるほど良好である。よって可及的早期に専門医紹介の手続きをとるべきである。

【3】歩行障害や膀胱直腸障害を認める場合,疼痛が強い場合,さらに高位頸髄病変により呼吸障害を呈する場合は緊急の対応が必要である。

症候の診かた

 症候のみから脊髄腫瘍と他の脊椎脊髄疾患を鑑別することは困難である。ただし,脊髄腫瘍による症候は以下の特徴を有するとされる。

【1】頸部痛,背部痛など,脊髄腫瘍の存在する髄節レベルに一致した疼痛やしびれにより発症することが多い。

【2】痛みは安静により軽快しないことが多い。これは,症状が安静により改善する脊椎変性疾患と対照的である。

【3】感覚障害は当初限局していたとしても,徐々に拡大する傾向がある。特に脊髄を外から圧迫する硬膜内髄外腫瘍の場合には感覚障害が上行し,脊髄髄内腫瘍の場合には下行することが多いとされる。

【4】症状の進行は病変の悪性度により異なる。

❶良性腫瘍では数か月から数年にわたり緩徐に進行する。

❷転移性腫瘍に代表される悪性腫瘍の場合はわずか数日で歩行不能となるなど急性増悪をきたす場合がある。

【5】脊髄髄内腫瘍では温痛覚が障害されるが,深部感覚が残存する解離性知覚障害を呈することがある。

検査所見とその読みかた

【1】画像検査

❶MRI

脊髄腫瘍を疑う場合にまず行うべき検査である。ただし,すべての症例で脊髄全長を

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?