診断のポイント
小児における単相性ADEMの診断基準が国際的に定められており,成人にもおおむね適用できる。
【1】多巣性の炎症性脱髄によると推定される中枢神経症状の出現。
【2】発熱では説明のつかない脳症(意識障害や行動異常)を伴う。
【3】発症から3か月以内の急性期において,頭部MRI画像に異常所見が認められる。典型的な脳のMRI画像所見は以下のとおり。
❶主として大脳白質を侵す比較的大きく(>1~2cm),辺縁不明瞭な散在性病変。
❷T1強調画像において低信号を示す白質病変はまれである。
❸視床や基底核などの深部灰白質にも病変が存在する。
【4】発症から3か月を超えて,新規の臨床症状やMRI病変の出現がない(本項目は小児発症の多発性硬化症との鑑別に重要)。
緊急対応の判断基準
【1】数日以内に進行する意識障害や行動異常は脳炎を含めた脳実質病変を示唆するため,頭部MRIの撮像と腰椎穿刺により採取した髄液検査が不可欠。
【2】自施設では施行不能の場合,対応できる施設へ緊急搬送する。
症候の診かた
【1】1~5日で極期に達する神経症状を認める。
【2】頭痛や発熱,倦怠感,嘔気・嘔吐などが先行する場合がある。
【3】国際診断基準では小児患者は脳症の存在が必須項目であるが,成人での規定はなく,成人例の20%程度に脳症を認める。
【4】片麻痺,小脳失調,視神経炎,脳幹部病変に由来する脳神経障害,けいれん発作,脊髄病変に起因する尿閉などが主症状である。
【5】2~30日前のウイルス感染やワクチン接種の既往があれば診断を支持する。
検査所見とその読みかた
【1】髄液検査
❶炎症性脱髄疾患に位置付けられるADEMであるが,20%の症例では正常所見を示すため,髄液検査単独での確定診断は困難である。
❷髄液細胞数は単核球優位の軽度の増加を示す。髄液蛋白は上昇するが,IgG indexの上昇やオリゴクローナルIgGバンドの検出例は少
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