診断のポイント
【1】緩徐進行性に非対称性の四肢筋力低下をきたす。
【2】感覚障害,錐体路徴候がみられない。
【3】運動神経伝導検査で脱力に対応する末梢神経において伝導ブロック所見を認める。
症候の診かた
【1】左右非対称性に末梢神経支配に一致する筋力低下・筋萎縮がみられる。
【2】下肢筋よりも上肢遠位筋が侵されることが多い。
【3】感覚障害がみられない。
【4】線維束性収縮を伴うことが多いため運動ニューロン疾患との鑑別が問題になるが,上位運動ニューロン徴候,球麻痺はみられない。
検査所見とその読みかた
【1】運動神経伝導検査:中核的な補助検査であり,脱力に対応する神経において伝導ブロック所見が認められる。またその部位において感覚神経伝導検査は正常である。
【2】MRI:病変が末梢神経近位部(神経叢や神経根近傍)にある場合,神経伝導検査による伝導ブロックの検出が困難であるが,末梢神経MRIにおける神経肥厚・造影効果は診断を支持する所見となる。
【3】脳脊髄液検査:約30%の患者において蛋白細胞解離が認められる。
【4】抗体検査:約半数の患者において血清中にIgM抗ガングリオシドGM1抗体が陽性となる。
確定診断の決め手
【1】確定診断における特異的なバイオマーカーは存在しないため,診断は臨床症状(末梢神経支配に一致する分布の筋力低下),神経伝導検査における伝導ブロック所見,その他の補助検査(末梢神経MRI,抗GM1抗体,脳脊髄液検査),除外診断によってなされる。
【2】免疫グロブリン療法に反応して症状が改善すれば診断を支持する所見となる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)(→):感覚障害のない筋力低下・筋萎縮と線維束性収縮は共通しているが,上位運動ニューロン徴候(痙性,腱反射亢進,異常反射),球麻痺が認められる。
【
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