診断のポイント
【1】さまざまな遺伝子変異を背景に,筋線維の壊死・再生を繰り返して筋組織の線維化・脂肪浸潤をきたし,進行性の筋萎縮および筋力低下を呈する疾患である。
【2】原因遺伝子により,さまざまな発症年齢,筋力低下の分布,随伴症状を呈しうる。
【3】臨床症状・経過,家族歴から筋ジストロフィーを疑い,筋生検や遺伝子検査で確定診断する。
症候の診かた
【1】主症状である筋力低下,筋萎縮は主に対称性,近位筋優位にみられることが多いが,非対称性(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーなど),遠位優位(縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーなど)といった特徴的な筋力低下の分布を呈することがあり,診断に有用なことがある。
【2】発症年齢(生下時~高齢),遺伝形式(常染色体優性,常染色体劣性,X連鎖),随伴症状(仮性肥大,心筋症,早期からの関節拘縮,早期からの呼吸筋障害,てんかん,知的機能低下など)は診断に有用である(表1図)。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査
❶筋破壊に伴い筋逸脱酵素の上昇がみられる。
❷最も代表的な筋逸脱酵素がクレアチンキナーゼ(CK)であるが,同時にトランスアミナーゼ(AST,ALT)の上昇もみられることがあり,肝障害と誤診される場合があるので注意する。
❸血清CKは安静や病状進行による筋萎縮で低下するため,必ずしも筋力低下の程度とは相関しない。
❹Duchenne型・Becker型筋ジストロフィー,福山型筋ジストロフィー,肢帯型筋ジストロフィー2Bのように非常に高い血清CK値を呈する疾患もあれば,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー,顔咽頭型筋ジストロフィーのように基準範囲内の血清CK値を呈しうる疾患もある。
【2】針筋電図
❶筋疾患と神経疾患の鑑別に重要な検査である。
❷筋疾患においては弱い収縮力で干渉過多波形を生じる早期動員や,短時間持続低振幅の運動単位電位,時に自発電位が認められる。
❸残存する筋
関連リンク
- 今日の診断指針 第8版/球脊髄性筋萎縮症
- 今日の診断指針 第8版/筋萎縮性側索硬化症
- 内科診断学 第3版/歩行障害
- 内科診断学 第4版/運動麻痺
- 新臨床内科学 第10版/1 筋萎縮性側索硬化症
- 新臨床内科学 第10版/(1)筋強直性ジストロフィー
- 新臨床内科学 第10版/3 多発ニューロパチー(多発神経炎)
- 新臨床内科学 第10版/8 肢帯型筋ジストロフィー
- 新臨床内科学 第10版/10 遠位型(三好型)筋ジストロフィー
- 今日の整形外科治療指針 第8版/McKusick型軟骨・毛髪低形成症
- 今日の整形外科治療指針 第8版/整形外科医に必要な筋・神経疾患の検査法
- 今日の整形外科治療指針 第8版/Charcot-Marie-Tooth病
- 今日の診断指針 第8版/多巣性運動ニューロパチー
- 今日の診断指針 第8版/封入体筋炎
- 今日の診断指針 第8版/遺伝性ニューロパチー