診療支援
診断

ジストニア
Dystonia
松本 英之
(三井記念病院・神経内科部長)

診断のポイント

【1】不随意の持続的な筋収縮がみられる。

【2】定型的な運動異常・姿勢異常を呈する。

【3】特定の運動や姿勢の際にみられる。

【4】小児では全身性ジストニアが多い。

【5】成人では局所性ジストニア(書痙,痙性斜頸,眼瞼けいれんなど)が多い。

緊急対応の判断基準

【1】ジストニア重積状態:時に致命的となり,緊急性が高い。全身の筋緊張が著しく亢進し,発熱,発汗,呼吸障害,誤嚥性肺炎,横紋筋融解,腎不全などをきたす。集中治療室で,静脈麻酔薬,筋弛緩薬を投与する。薬剤抵抗性の場合,バクロフェン髄注療法や脳深部刺激術も検討する。

【2】抗精神病薬などの薬剤投与後の急性ジストニア反応:気道や呼吸に影響する場合には,致命的となりうるため,抗コリン薬やジアゼパムの静注を行う。

症候の診かた

【1】視診と触診:持続的な筋収縮による異常運動とその罹患部位を把握する。全身性ジストニアか局所ジストニアかを判別する。診察時に症状がない場合もあり,症状が出現する環境をつくる,症状出現時にビデオ記録をしておくなどの工夫が必要である。

【2】定型的:運動異常や姿勢異常が一定のパターンをとる。

【3】共収縮:主動筋と拮抗筋が同時に収縮する。正常では主動筋の収縮と拮抗筋の弛緩により運動調節がなされているが,ジストニアではそれが障害される。

【4】感覚トリック:特定の感覚入力によって症状が改善する。書痙では対側の手で特定の部位(手,前腕など)に触れる,痙性斜頸では頭頸部の特定の部位(顎など)を触れる,眼瞼けいれんではサングラスをかけるなどの行為で症状の改善がみられる。

【5】動作特異性

❶ある特定の動作のみが障害される。書痙は字を書くとき,音楽家のジストニアでは専門の楽器を演奏するとき,スポーツ選手のジストニア(イップス)は,ゴルフのパターの際,野球の投球の際など,特定の動作のみで症状がみられる場合がある。

❷下肢のジストニア

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