診断のポイント
【1】顔面を含まない四肢麻痺,片麻痺,感覚障害,膀胱直腸障害。
【2】解離性大動脈瘤,大動脈の術後。
【3】原因不明のくも膜下出血。
緊急対応の判断基準
【1】突発発症の場合,脳血管障害との鑑別が重要。
【2】脳梗塞では,制限時間のある緊急治療(アルテプラーゼ静注療法,カテーテルによる血栓回収術)の適応となる可能性があるため,すみやかに鑑別しなければならない。一方,脊髄硬膜外血腫を脳梗塞と誤診しアルテプラーゼ静注療法を行うと,致命的となる。
【3】脊髄硬膜外血腫は,緊急で外科治療が必要なため,すみやかに手術可能な専門施設に転送する。
症候の診かた
【1】症状の経過:原因によって典型的な経過が異なる。
❶脊髄梗塞(前脊髄動脈症候群,後脊髄動脈症候群):脳梗塞と同様,突発発症が多い。
❷脊髄硬膜外血腫:疼痛を伴って突発発症し,階段状,上行性に進行することがある。
❸脊髄血管奇形や動静脈瘻
■Nidusや動脈瘤,varixの破綻により髄内出血,くも膜下出血を生じ,突発する疼痛,脊髄症状をきたす。
■非出血例,特に動静脈瘻では,静脈還流障害によって緩徐に運動障害,感覚障害が進行する。
【2】症状の分布
❶運動障害
■外側皮質脊髄路の障害で上位運動ニューロンが障害され,障害レベル以下の同側の痙性麻痺,腱反射亢進,病的反射が出現する。
■前角の障害では下位運動ニューロンが障害され,障害髄節に限局した同側の弛緩性運動麻痺,腱反射低下,消失がみられる。
❷感覚障害
■脊髄視床路の障害により,障害レベル以下の対側の温痛覚障害を呈する。一方,後角障害では,障害髄節に限局した同側の温痛覚障害がみられる。
■後索の障害では,同側の深部覚,位置覚の障害をきたす。
■触覚は,後索のほか脊髄視床路も走行するため,Brown-Séquard症候群のように,障害が片側に限定しているときには保たれる。
❸膀胱直腸障害:両側性の障害で,反射