ビタミン各類の欠乏症によりさまざまな症状を生じる。ここではビタミンB1欠乏によるWernicke脳症とビタミンB12欠乏症を取り上げる。それ以外のビタミン類欠乏による神経症状としては表1図を参照されたい。
[Ⅰ]Wernicke脳症
診断のポイント
【1】大量飲酒,胃切除後,低栄養状態などに続発する。
【2】意識障害,外眼筋麻痺,運動失調が3主徴。
【3】臨床症状,MRI所見,血中ビタミンB1低下によって診断される。
【4】Korsakoff症候群の合併(Wernicke-Korsakoff症候群)に注意する。
症候の診かた
【1】意識障害,外眼筋麻痺,運動失調が3主徴であるが,すべての症状を呈するのは全体の3分の1以下である。
【2】意識障害:傾眠から昏睡まで多様であるが,意識障害のみのことも少なくない。
【3】外眼筋麻痺:両側の外転神経麻痺や眼振を呈し,進行すると完全な外眼筋麻痺になる。
【4】運動失調:失調性歩行や体幹失調を認める。
【5】全身症状:ビタミンB1欠乏症では,全身倦怠感,動悸,睡眠障害,食欲不振,便秘をきたし脚気心と末梢神経障害は特徴的である。
検査所見とその読みかた
【1】頭部MRI:アルコール性では,視床内側,中脳水道,乳頭体など典型的な部位に病変を有することが多い(図1図)。非アルコール性では,典型的な部位に加えて脳神経核,大脳皮質,小脳などに病変を認めることが多い。典型的なMRI所見を呈する場合は予後不良のことが多い。
【2】血中ビタミンB1低下:通常は血中ビタミンB1の測定を行い,その低下を確認する。
確定診断の決め手
【1】意識障害,外眼筋麻痺,運動失調。
【2】特徴的な脳MRI所見。
【3】血中ビタミンB1低下。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】特徴的な3主徴を呈しているときは診断しやすいが,意識障害のみをきたすことがある。そのため低血糖発作,肝性脳症,電解質異常,アルコ