診療支援
診断

胃切除後症候群
††
Postgastrectomy Syndrome
掛地 吉弘
(神戸大学大学院教授・外科学講座食道胃腸外科学分野)

診断のポイント

【1】ダンピング症候群。

【2】輸入脚症候群。

【3】残胃の排出遅延。

【4】栄養障害,貧血,骨代謝障害。

【5】逆流性食道炎,胆石症・胆囊炎。

緊急対応の判断基準

【1】輸入脚症候群:腹部CT画像検査で内ヘルニアや捻転,血流障害,穿孔を伴う場合は手術が必要となる。

【2】残胃の排出遅延:腹部CT画像検査で著明に拡張した残胃を認める。経鼻胃管による減圧を行う。

【3】ダンピング症候群での低血糖:血糖測定を行いブドウ糖の経口投与や静脈注射を行う。

【4】胆囊炎:急性胆囊炎に対し胆囊摘出術を行う。胃切除後に無石性胆囊炎を発症することがあり,経皮経肝胆囊ドレナージや手術が必要となる。

症候の診かた

【1】ダンピング症候群

❶早期ダンピング症候群:小腸へ急速に高浸透圧の食物が流入すると,小腸に血管内の水分が移動し循環血漿量が減少する。食後30分以内に顔面紅潮・蒼白や冷汗,動悸,めまい,失神,腹痛,悪心・嘔吐,下痢などが出現する。

❷後期ダンピング症候群:急速に流入した食物が小腸で吸収されると急激な高血糖をきたし,インスリンが過剰分泌される。食後2~3時間に低血糖をきたし,冷汗や脱力感,めまい,全身倦怠感などを呈する。

【2】輸入脚症候群:BillrothⅡ法やRoux-en-Y法による再建後,輸入脚に通過障害をきたすと胆汁や膵液の排出が障害される。輸入脚の内圧が上昇し腹痛や胆汁性嘔吐を呈する。急性輸入脚症候群は急激な腹痛と無胆汁性嘔吐を呈する。

【3】残胃の排出遅延:残胃吻合部に器質的な通過障害がないにもかかわらず,胃壁緊張度低下により残胃が著明に拡張し,悪心や嘔吐,腹痛,腹部膨満などを呈する。

【4】栄養障害:胃貯留機能低下や消化吸収不良により下痢,脂肪便,低蛋白血症,体重減少,浮腫などが生じる。

【5】貧血:胃酸分泌量が低下し,鉄吸収が阻害され小球性低色素性貧血を生じる。胃壁細胞から分泌される内因

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