診療支援
診断

大腸憩室症
Diverticular Disease of the Colon
樫田 博史
(近畿大学教授・内科学(消化器内科))

診断のポイント

【1】本邦での頻度は欧米より低いが,増加傾向。

【2】日本人では近位結腸に多いが,年齢とともに遠位結腸の割合が増加し,多発する。米国白人では遠位結腸に多い。

【3】ほとんどの症例が無症状であり,検査で偶然に発見される。

【4】出血または憩室炎をきたすと,それが契機となって診断される。

【5】出血は通常40歳以上で,高齢者や男性に多い。

症候の診かた

【1】便通異常

❶ほとんど無症状であるが,便秘や下痢を呈する症例もある。

❷憩室が多発し顕性・不顕性に炎症を繰り返すと,狭窄や癒着を生じうる。

【2】出血

❶下部消化管出血のうち最も多く,大腸憩室保有者の累積出血率は1年で0.2%,5年で2%,10年で10%とされる。

❷遠位結腸憩室の場合は赤い血便が多い。

❸近位結腸憩室の場合は便色がやや黒いが,出血速度が速ければ赤いまま排出される。

【3】腹痛

❶大腸憩室炎の頻度は大腸憩室出血の約3倍といわれる。

❷本邦では近位結腸に多いが,年齢とともに遠位結腸の割合が増加する。

❸悪化すれば腹膜刺激症状を伴う。

❹憩室出血の場合はほとんど腹痛を伴わない。

【4】発熱:憩室炎でも軽症の場合は発熱を伴わないが,重症化すると発熱を伴う。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査

❶出血や憩室炎を伴わない大腸憩室の場合は血液検査所見に異常を呈さない。

❷出血例では,その程度・期間に応じて貧血を呈するが,BUN/Cr比は30未満である。

❸憩室炎例では,CRPや白血球数が増加する。腹膜炎を伴えばCK,LDH,アミラーゼなども上昇しうるが,非特異的である。

【2】画像診断(CTまたは超音波)

❶無症候性の憩室でも,大腸壁外に突出し内部にガスや便を伴う構造としてとらえられることがある。

❷出血しても構造変化はないが,活動性出血の場合,造影CTで腸管内への造影剤漏出をとらえられることがある。

❸憩室炎の場合は,憩室および周囲大腸の壁肥厚

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