診療支援
診断

虚血性腸管障害
Ischemic Intestinal Disorder
内藤 裕二
(京都府立医科大学大学院准教授・消化器内科学教室)

 虚血性大腸炎,上腸間膜動脈閉塞症,非閉塞性腸管虚血,上腸間膜静脈血栓症を中心に述べる。

診断のポイント

【1】虚血性大腸炎(ischemic colitis:IC)は突然の腹痛,血便,下痢で発症する。

【2】上腸間膜動脈(superior mesenteric artery:SMA)閉塞症は他の腹腔内臓器疾患で説明のつかない原因不明の腹痛を生じる。

【3】脳心血管疾患の既往,治療中の患者の急性腹痛(急性SMA閉塞症)。

【4】維持透析後,心臓手術後,高齢者,糖尿病は非閉塞性腸管虚血(non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI)のリスクとなる。

【5】二次性上腸間膜静脈(superior mesenteric vein:SMV)血栓症には原因となる血液凝固異常症,止血機能異常症が存在する。

緊急対応の判断基準

【1】腸管壊死をきたすと死亡率も高いため,早期の診断から適切な治療を行うことが重要である。特に急性SMA閉塞症では,治療の遅延につながる可能性のある診断検査よりも臨床診断を優先させるべきである。

【2】SMA閉塞症で腸管梗塞が疑われる場合には,確定診断ならびに迅速な腸管血流の再開を可能とする外科的治療が適応となり,転院が適切と判断した場合,詳細な検査は不要。

症候の診かた

【1】突然の腹痛

❶IC:突然の腹痛,血便,下痢で発症し,病変部に圧痛を認めることが多い。

❷SMA閉塞症:典型例は急性に発症した激烈な腹痛であり,進行し腸管壊死が起こると汎発性腹膜炎に至るため,早期診断,早期治療が必要。

❸SMA閉塞症,NOMI,SMV血栓症のすべてにおいて,急性型,亜急性型,慢性型がある。

【2】腹膜刺激症状

❶経時的な変化により,腸間膜虚血の進行とともに腹部膨満,持続的腹痛,鼓腸,蠕動音の減弱,さらに進行すると筋性防御やBlumberg徴候などの腹膜刺激症状が出現する。

❷時

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