診療支援
診断

吸収不良症候群・蛋白漏出性胃腸症
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Malabsorption Syndrome, Protein-losing Gastroenteropathy
大宮 直木
(藤田医科大学教授・消化管内科学)

診断のポイント

 吸収不良症候群(表1)と蛋白漏出性胃腸症(表2)は独立した症候群であるが,オーバーラップすることも多い。

【1】吸収不良症候群

❶血液検査での異常値:後述の[検査所見とその読みかた]を参照。

❷脂肪の吸収障害:糞便SudanⅢ染色で100倍率鏡視下1視野10個以上の脂肪滴の存在(正常:2~3個以内/1視野)。

❸小腸吸収障害:BT-PABA試験〔PFD(pancreatic functional diagnostant)試験〕で70%以下。膵外分泌機能検査であるので,膵外分泌機能が低下している場合でも異常値となる。

❹糖質の吸収障害:D-キシロース吸収試験〔5gまたは25g/水200mLを飲水後,5時間蓄尿,5g法では1.5g(排泄量30%)未満または25g法では5~8g(排泄量20~32%)未満〕

【2】蛋白漏出性胃腸症

❶血液検査での異常値:低蛋白血症,末梢血リンパ球減少,低カルシウム血症・低ビタミンD血症(テタニー),低γ-グロブリン血症(血清IgG,IgA,IgM)。

❷消化管からの蛋白漏出の証明:蛋白漏出シンチグラフィ陽性,糞便中α1アンチトリプシンクリアランス(13mL/日以上)。

症候の診かた

【1】吸収不良症候群

❶下痢(脂肪便):脂肪の吸収障害による。腐敗臭を有し,灰白色で光沢を帯びている。粥状また泥状で量が多い。

❷体重減少,るい痩,倦怠感:カロリー低下による。

❸浮腫,腹部膨満:低蛋白血症による。

❹動悸,立ちくらみ,ふらつき:貧血による。

❺味覚低下,皮膚炎:微量元素(亜鉛)の吸収障害による。

❻出血傾向:ビタミンKの低下による。

❼テタニー:ビタミンD,カルシウムの吸収障害による。

【2】蛋白漏出性胃腸症

❶下痢。

❷体重減少,るい痩,倦怠感。

❸四肢浮腫:低蛋白血症による圧痕性浮腫(左右対称),非圧痕性リンパ浮腫(左右非対称)。

❹腹部膨満:腹水による(腸リンパ管拡張症

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