診療支援
診断

イレウス
Ileus
小林 清典
(北里大学新世紀医療開発センター教授)

診断のポイント

【1】イレウスとは何らかの原因で腸管内容物の通過が障害された状態で,排便や排ガスの停止,腹痛,悪心,嘔吐がみられる(表1)。

【2】開腹手術歴を確認(原因として癒着性のものが60%を占める)。

【3】腹部所見で腹部膨隆や圧痛,腸雑音の異常。

【4】腹部単純X線で腸管拡張と鏡面像〔ニボー(niveau)像〕。

【5】腹部造影CTで腸管拡張,閉塞部位,血流障害の有無を確認。

緊急対応の判断基準

【1】絞扼性イレウスや消化管穿孔に伴う麻痺性イレウスは緊急手術が必要になるので,迅速に診断し,対応する必要がある

【2】緊急手術が必要になる臨床徴候

❶持続する激烈な腹痛,腹膜刺激症状,腸蠕動音の減弱。

❷腹部造影CTでは腸管血流の低下や腹水貯留,腹腔内遊離ガス像(free air)などに着目する。

症候の診かた

【1】臨床症状

❶腹痛

初期は間欠性で次第に持続性になるが,嘔吐により一時的に痛みが軽減することがある。

絞扼性イレウスでは初期から激烈な持続痛である

❷嘔吐:吐物は上部小腸の閉塞では胆汁が主な混入物であるが,大腸や下部小腸の閉塞では糞臭がする吐物に便が混じることがある。

❸排便・排ガスの停止:発症とともに排便・排ガスが停止する。腹部膨満を伴うが,その程度は上部小腸より下部小腸や大腸の閉塞のほうが高度である。

❹全身状態

脱水に伴う頻脈や倦怠感などを認める。

絞扼性イレウスで腸管壊死や穿孔を合併するとショック状態となり,顔面蒼白,呼吸促迫,血圧低下などをきたし,全身状態が急激に悪化する。

【2】身体所見

❶腹部所見

腹部の膨隆や圧痛がみられる。

絞扼性イレウスで腸管壊死や穿孔を合併すると,腹膜刺激症状を認めるようになる

腸雑音

単純性イレウスでは亢進し,金属性雑音を聴取することがある。

絞扼性イレウスで腸管壊死が進行すると次第に腸雑音の減弱を認めるようになる。

麻痺性イレウスでは,最初から

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