診療支援
診断

腹膜炎
Peritonitis
真弓 俊彦
(産業医科大学教授・救急医学講座)

診断のポイント

【1】病歴,腹部所見から腹膜炎を疑う。

【2】図1の2 step methodに沿って,バイタルサイン(A:気道,B:呼吸,C:循環,D:意識)を確認し,異常があればこれらをAから順に是正する。

【3】腹部所見で腹部の板状硬,tapping pain,反跳痛などの腹膜刺激症状があれば,腹膜炎を疑う。

【4】血液検査でのWBC,CRPなどの炎症所見と,腹膜炎に伴う,腸管麻痺,腹水,free airなどの腹部エコー・CT所見とで診断できる。

【5】腹膜炎の原因疾患も診断する。消化管穿孔に伴うfree air,腸管壊死など原因疾患が類推できる場合もある。

緊急対応の判断基準

 バイタルサインに変調をきたしている場合,腸管虚血や出血を伴う場合には,緊急対応が必要である。

症候の診かた

 腹部の緊張がとれるように,両膝を軽く曲げてもらった状態で診察する。

【1】聴診:腹膜炎に伴う蠕動音低下がないか確認する。

【2】触診

❶圧痛部位を確認する。

❷板状硬,tapping pain,反跳痛などの腹膜刺激症状の有無を確認する。

検査所見とその読みかた

【1】血液検査:炎症所見やプロカルシトニンやプレセプシンなどの感染を示唆する検査の陽性を確認する(ただし,発症初期では,CRPなどは増加していない)。

【2】腹部エコー,CT:腹膜炎に伴う腸管麻痺,腹水などを類推できる。

【3】画像検査:腹膜炎の原因疾患の診断も試みる。消化管穿孔に伴うfree air,腸管壊死など原因疾患が類推できる場合もある。

確定診断の決め手

 炎症反応+腹膜刺激所見あるいは画像による腹膜炎を示唆する所見や腹膜炎をきたす疾患が明らかになること。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】急性膵炎,腹部大動脈瘤破裂など,腹膜炎でなくても激痛によって腹部緊張が生じる場合もある。

【2】術後疼痛:術後の縫合不全や消化管穿孔などに伴う腹膜炎の場合は,鑑別が

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