診療支援
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■腎疾患の最近の動向
深川 雅史
(東海大学教授・腎内分泌代謝内科学)


 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の概念が行きわたり,推算糸球体ろ過量(eGFR)が多くの施設で血清クレアチニン濃度から自動的に計算されるようになった。筋肉量の極端に多い人や少ない人では実際の腎機能からずれることがあること,最初から体表面積補正がかかっていることや,薬剤の投与量調節の多くはいまだにクレアチニンクリアランスによっていることなど,まだ問題点は残っているが,日常の臨床で,非専門医がGFRの低下を早期に認識するのに大きく貢献している。

 これに伴い,治験や臨床研究における腎臓病のハードアウトカムの設定を見直そうという動きが進行してきた。従来は血清クレアチニンの倍加(すなわちGFRの50%低下)や腎代替療法導入(末期腎不全)など,非常に評価に時間のかかるアウトカムが使用されていたため,創薬に必要な時間が長くなり,新しい薬剤の開発が躊躇されることもしばしばあった。最近日本人においても,研究対象を考慮する必要はあるものの,2年間ないし3年間でeGFRが30ないし40%低下することが,サロゲートエンドポイントになりうる可能性が示されており,今後の研究での活用が期待される。

 さて,CKD分類においては,リスクの評価により,原疾患の違い,GFRの低下以外に,アルブミン尿(蛋白尿)の程度も加味して,より細かいステージ分類が行われるようになっている。しかし,糖尿病性腎症においては,GFR 30mL/分以上ではアルブミン尿の程度による分類,それ未満ではGFR低下の程度に立脚した糖尿病性腎症のステージ分類がわが国では用いられてきている。しかし近年高齢者が増えるとともに,微量アルブミン尿,顕性蛋白尿を経て,腎機能が低下していくような典型的な進行パターンを示さない糖尿病患者も多数存在することが認識されるようになり,それらも総称して新たに糖尿病性腎臓病(dia

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