診断のポイント
【1】高クロール(Cl)血症性代謝性アシドーシス。
【2】アニオンギャップ〔AG=[Na+]-[バイカーボネート:HCO3-]-[Cl-]〕は正常(12±2mmol/L)。
【3】血清カリウム(K)濃度異常(表1図):1型と2型では低K血症,4型では高K血症。
【4】糸球体機能は正常もしくは軽度低下。
症候の診かた
【1】アシドーシスによる症候
❶過換気:最も特徴的な徴候である。努力性呼吸または呼吸困難のこともある。
❷消化器症状:食欲不振,悪心・嘔吐。
❸脳血流の増加による頭痛,ひどい場合には意識障害。
【2】K濃度異常による症候
❶低K血症:四肢の弛緩性麻痺が多い。高度になると不整脈も生じる。消化器系の症状として便秘,腹部膨満,イレウスもある。また長期に続くと腎濃縮障害により多尿となるとともに糸球体ろ過量(GFR)が低下する。
❷高K血症:けいれん性と弛緩性の筋症状が起こりうる。不整脈も低K血症性に比して重篤のものが多いため注意。
【3】骨・石灰化に関する合併症
❶1型:尿路結石や腎結石症が多い。アシデミアに対する骨の緩衝作用により尿中カルシウム(Ca)排泄が亢進しかつクエン酸排泄が低下し尿pHが高いことによる。
❷2型:Ca排泄が亢進するものの尿路結石は少なく,小児では骨軟化症やくる病,成人では偽骨折がみられる。この原因としてはクエン酸排泄が低下せず,かつ遠位尿細管での尿酸性化が保たれていることによる。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査
❶血清電解質測定と血液ガス分析:血清K濃度異常が認められたら,血清Cl濃度測定と血液ガス分析を行い,AG正常の代謝性アシドーシスがあるか否か検索する。
❷病歴聴取
■小児科領域では遺伝的素因によるものが多いが,内科領域では腎尿細管に影響するさまざまな疾患(特に膠原病,パラプロテイン血症),併用薬剤(特に重金属中毒,リチウムなど)によるものが多