診断のポイント
【1】間接ビリルビン高値,網赤血球増加(絶対数よりもむしろ割合が重要)。
【2】末梢血塗抹標本で小型球状赤血球や有口赤血球。
【3】典型例では常染色体優性遺伝形式,ただし3分の1は孤発例。
【4】脾腫。
【5】胆石症。
症候の診かた
【1】黄疸:ほぼ必発(86%)であるが,溶血の程度が軽微な場合には見落としやすい。
【2】貧血:比較的軽い溶血の場合には骨髄での赤芽球過形成によって代償(網赤血球増加)されるので,貧血症状は存在しない。
【3】脾腫:頻度は高く(75~82%),その大きさは左季肋部で肋骨弓下平均2~3横指である。
【4】胆石症:中年までに胆石の既往がある(43~85%),または胆囊摘出術を受けていることが少なくない。
検査所見とその読みかた
【1】末梢血液像
❶貧血の程度はさまざまであるが,軽症~中等度のことが多い。
❷末梢血塗抹標本で小型球状赤血球や有口赤血球(中央に亀裂ないし小孔のある赤血球)を認める(図1図)。
❸球状赤血球は実際には全赤血球の10%程度であることが多いので,赤血球の有口化(あるいはウニ状化)から球状化への一連の形態変化をとらえる。
【2】赤血球恒数:赤血球内のヘモグロビン量に対する赤血球膜量の減少により平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)は高値を示す。
【3】血液生化学・尿検査
❶間接型高ビリルビン血症(非摘脾症例の平均値:3.41±1.87mg/dL),乳酸脱水素酵素(LDH)やAST高値(本症ではあまり顕著ではない)などが認められる。
❷血清ハプトグロビン値は低下傾向を示すが,溶血発作時でなければその程度は軽度のことが多い。
❸尿検査でウロビリノーゲン増加(48%の症例で強陽性)を認める。
【4】赤血球浸透圧抵抗試験
❶表面積/容積比が減少したHSの赤血球は,それ以上容積を増やす余裕がないため,正常赤血球よりも高張な溶液で容易に溶血をきたす。
❷新鮮血では正常パ
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