甲状腺機能亢進症は,甲状腺での甲状腺ホルモンの過剰産生により甲状腺中毒症が起こった病態である。厳密には中枢性に下垂体甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生が増加し甲状腺機能が亢進する場合(TSH産生腫瘍)や中毒性多結節性甲状腺腺腫(Plummer病を含む)を原因とするものも含まれるが,日常臨床ではほとんどがBasedow病であり,ここではBasedow病について概説する。
診断のポイント
Basedow病の診断ガイドラインを表1図に示す。
【1】体重減少,動悸,発汗,手指振戦,下痢などの甲状腺中毒症状を認める。
【2】血清甲状腺ホルモン高値,TSH値感度以下。
【3】抗TSH受容体抗体陽性。
【4】Basedow病眼症を認める。
【5】意識障害など重症例は甲状腺クリーゼを疑う。
緊急対応の判断基準
意識障害や重症の肝機能障害などがあり,「甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017」により甲状腺クリーゼと診断されれば,緊急の措置が必要であり,ICU管理による全身管理+チアマゾール(MMI),β遮断薬や無機ヨード,副腎皮質ホルモン薬の投与など集学的な治療が必要となる。
症候の診かた
【1】甲状腺中毒症状:典型例では体重減少,動悸,発汗,手指振戦,下痢などを認める。
【2】軟らかい甲状腺腫を認める症例が多い。
【3】Basedow病眼症:明らかでない症例も多いが,軽症例では眼瞼部の浮腫だけで,重症例では眼球の突出や充血が認められる(図1図)。
【4】高齢者では臨床症状に乏しいこともある。
【5】周期性四肢麻痺:時に合併する。アジアの男性に多く,過食後の翌朝などに起こりやすい。
検査所見とその読みかた
【1】生化学検査:血清コレステロール低値やCPK低値,軽度の肝機能障害やALPの高値などとともに血清TSH値感度以下,遊離T4値と遊離T3値上昇が認められ,さらに抗TSH受容体抗体(TRAb)が高値であればほぼBased