診断のポイント
【1】頻度:成人女性の0.7~0.9%,成人男性の0.2~0.4%に認められる。高齢になるに従って頻度が多くなる。潜在性の原発性甲状腺機能低下症〔血中甲状腺ホルモンレベルが正常にもかかわらず,血中甲状腺刺激ホルモン(TSH)が上昇している病態〕の頻度はさらに7~9倍多く存在する。
【2】検査所見:遊離T4低値およびTSH高値。
【3】症候:無気力,易疲労感,眼瞼や下腿の浮腫,寒がり,体重増加,動作緩慢,嗜眠,記憶力低下,便秘,嗄声,難聴,こむら返り,徐脈などのいずれかの症状。
緊急対応の判断基準
粘液水腫昏睡と判断された場合は緊急対応が必要となる。すなわち,以下のような症状を合併するときである。
【1】意識障害〔Japan Coma Scale(JCS)で10以上,Glasgow Coma Scale(GCS)で3以上〕
【2】低体温
【3】低換気
【4】循環不全(平均血圧75mmHg以下,脈拍数60/分以下あるいは昇圧薬投与必要など)
【5】低ナトリウム血症130mEq/L以下
症候の診かた
【1】自覚症状:無気力,易疲労感,寒がり,体重増加,記憶力低下,嗜眠,便秘,嗄声,難聴など。
【2】他覚症状:眼瞼や下腿の浮腫,動作緩慢,アキレス腱反射弛緩相の遅延,徐脈。
【3】甲状腺の性状:萎縮またはびまん性甲状腺腫を認めることが多い。
検査所見とその読みかた
【1】遊離T3低値または正常値。
【2】慢性甲状腺炎(橋本病)が原因の場合,抗マイクロゾーム(またはTPO)抗体または抗サイログロブリン抗体陽性となる。
【3】阻害型抗TSH受容体抗体により本症が発生することがある。
【4】コレステロール高値,クレアチンホスホキナーゼ高値を示すことが多い。
【5】軽度の肝機能異常を示すことがある。
【6】心電図で低電位。
【7】甲状腺エコー:橋本病では,甲状腺の全体的萎縮,または内部性状不均一なびまん性甲状腺腫大を
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