診療支援
診断

ADH分泌不適合症候群
Syndrome of Inappropriate Secretion of ADH (SIADH)
椙村 益久
(藤田医科大学教授・内分泌・代謝内科学)

診断のポイント

【1】低ナトリウム血症を認める。

【2】脱水症状を認めない。

【3】尿中ナトリウム濃度は20mEq/L以上である。

【4】副腎不全を除外する。

緊急対応の判断基準

 以下の場合は専門医療機関に搬送する。

【1】血清ナトリウム濃度が120mEq/L未満。

【2】けいれん,意識障害など重篤な症状を認める。

症候の診かた

 中枢神経症状を主体とする症状を呈する。症状の程度は,低ナトリウム血症の重症度(血清ナトリウム濃度)と進行速度(急性または慢性)による。

【1】急性期:症状が出現しやすく,頭痛,嘔気,記銘力低下,食欲不振,錯乱,不穏,傾眠,けいれん,昏睡などの症状をきたす。

【2】慢性期:症状が明らかでないことも少なくないが,血清ナトリウム濃度が著しく低い場合は同様の中枢神経症状を生じうる。

検査所見とその読みかた

【1】血清ナトリウム濃度:135mEq/L未満。

【2】血漿浸透圧:280mOsm/kg未満。

【3】低ナトリウム血症,低浸透圧血症にもかかわらず,血漿バソプレシン濃度が抑制されていない。

【4】尿中ナトリウム濃度:20mEq/L以上。

【5】尿浸透圧:100mOsm/kg以上。

【6】腎機能正常。

【7】副腎皮質機能正常。

確定診断の決め手

 脱水所見を認めず,上記[検査所見とその読みかた]【1】【7】を認める場合。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】副腎不全():血中コルチゾールの低下。ミネラルコルチコイド分泌障害がない場合,脱水症状なく,尿中ナトリウム濃度20mEq/L以上である。

【2】下痢,嘔吐,利尿薬服用,塩類喪失性腎症,中枢性塩類喪失症候群などの体液量の減少した低張性脱水

❶身体所見:皮膚ツルゴールの低下,皮膚・口腔粘膜・舌の乾燥,腋窩乾燥,体重減少,バイタルサインで頻脈,起立性低血圧などは体液量減少の所見である。

❷血液所見:ヘマトクリット,総蛋白,BUN,クレアチニンの上昇は

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