診療支援
診断

糖尿病性昏睡
Diabetic Coma
長坂 昌一郎
(昭和大学藤が丘病院糖尿病・代謝・内分泌内科・教授)

 糖尿病患者の意識障害には,一般的な意識障害()と,糖尿病にかかわる特異的なものがある。本項では,糖尿病の病態や治療にかかわる特異的な病態を概説する。

診断のポイント

【1】低血糖昏睡

❶インスリンやスルホニル尿素薬(SU薬)などの薬物療法を受けている患者の高度の意識障害では,まず低血糖昏睡を疑う。

❷SU薬による低血糖は,高齢で腎障害がある患者に多い

❸低血糖の確認と,ブドウ糖静注による改善で診断する。

【2】糖尿病ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA,〔日本糖尿病学会(編・著):糖尿病治療ガイド2018-2019.83頁 糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態の鑑別〕)

❶口渇,多飲や多尿,消化器症状(悪心・嘔吐)が多くみられ,高血糖,尿ケトン体陽性,代謝性アシドーシスで診断する。

❷1型糖尿病に多いが,若年者のソフトドリンクケトアシドーシスもまれではない。

【3】高浸透圧高血糖状態(hyperosmolar hyperglycemic syndrome:HHS,〔日本糖尿病学会(編・著):糖尿病治療ガイド2018-2019.83頁 糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態の鑑別〕)

❶高齢者で漠然とした活気のなさ,意識レベルの低下,脱水症状,振戦などの神経学的異常がみられ,高血糖,高浸透圧血症で診断する。

❷感染症や副腎皮質ステロイド投与など,血糖上昇をきたす誘因があることが多い。

【4】乳酸アシドーシス(lactic acidosis:LA)

❶ショックを認め,血糖値は正常ないし上昇,代謝性アシドーシス,乳酸高値で診断する。

❷敗血症性ショックなど重症の全身性疾患に続発することが多いが,腎障害患者などへのビグアナイド薬の投与により発症することがある。

緊急対応の判断基準

【1】インスリン治療による低血糖で,ブドウ糖投与で回復し,経口摂取が可能な場合は帰

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