診療支援
診断

Fabry病
Fabry Disease
伊藤 由美
(新潟大学大学院特任准教授・健康増進医学講座)

診断のポイント

【1】疾患の原因:α-galactosidase A(α-Gal A)の遺伝子(GLA)変異。α-Gal A酵素活性の欠損~低下により基質であるglobotriaosylceramide(Gb3)やglobotriaosylsphingosine(Lyso-Gb3)などの糖脂質が全身の組織に進行性に蓄積する。X連鎖性遺伝形式。

【2】症状

❶男性の場合

小児期からFabry病特有の症状が現れ,加齢に伴い慢性心不全,慢性腎不全,脳血管障害などが現れる。

上記のような古典型に加え,心症状のみの心型,腎症状のみの腎型もあり,成人以降に発症する。

❷女性の場合:重症度はさまざまだが,約80%は何らかの症状が出る。

【3】家族歴の聴取が重要。発端者のみならず,他の血縁者の早期診断,早期治療の機会を得ることにつながる。

症候の診かた

【1】Fabry病特有の症状

❶被角血管腫:臍周囲~大腿にみられる頻度が高い。背部,陰囊,口腔粘膜にもみられる。皮膚表層毛細血管の拡張による暗赤色の平坦またはやや隆起した点状病変で圧迫しても消失しない。

❷四肢末端痛:幼児期~学童期によくみられ,青年期には軽減することが多い。針で刺されるような強い痛みが発作的に生じ,数分~数日持続する。運動,精神的ストレス,疲労などが誘因となることがある。

❸発汗低下:暑熱に対する体温調節機能が低下するため,熱中症を起こしやすい。入浴を嫌うことも多い。

❹眼症状:角膜の灰白色の渦巻き状の混濁。頻度が高い。

❺その他:下痢,腹痛,感音性難聴,めまいなど。

【2】予後に影響する症状

❶腎症状:初期症状は多尿,多飲である。進行に伴い浮腫や乏尿となり,尿毒症による症状が出現する。古典型では小児~思春期より検尿異常が出現,30~40歳で末期腎不全に至る。

❷心症状:肥大型心筋症類似の症状,虚血性心疾患,致死性不整脈による突然死もある。

❸脳血管症状

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