診断のポイント
【1】鉄過剰を示す血液生化学所見(血清フェリチン増加,血清鉄増加,トランスフェリン飽和度の増加)。
【2】肝鉄濃度の増加(生検での組織鉄量測定,CT・MRIによる定量)。
【3】多数回の赤血球輸血歴(輸血後鉄過剰症の場合)。
【4】鉄沈着による組織傷害,臓器障害(皮膚・肝臓・心臓・膵臓・下垂体・甲状腺・性腺・関節など)。
【5】輸血後鉄過剰症の診断(表1図)
❶総赤血球輸血量20単位以上(小児の場合,赤血球濃厚液50mL/kg以上)。
❷血清フェリチン500ng/mL以上。
症候の診かた
【1】自覚症状:鉄過剰症による特異的な自覚症状はなく,臓器障害が進行すると,各臓器障害に伴う症状が認められる。
【2】他覚所見
❶皮膚所見
■鉄沈着により特徴的な皮膚の変色(灰色~褐色~青銅色)が認められることが多い(図1図)。
■脱毛を認めることもある。
❷肝腫大
■頻度が高い。
■長期にわたる肝鉄濃度の増加は肝硬変への進行を促し,脾腫やくも状血管腫,食道静脈瘤などをきたす。
❸心不全:心臓への鉄沈着はポンプ機能の低下や不整脈の原因となり,進行すると心不全に伴う浮腫や動悸を認める。
❹内分泌腺障害による所見
■多くの内分泌腺が影響を受けるが,進行例では糖尿病や精巣萎縮などが認められる。
■小児の鉄過剰症では,低身長,性機能発達障害など成長関連の障害が問題となる。
❺関節所見:鉄過剰症では関節痛がみられることがある。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査:血清フェリチン高値(>500ng/mL),血清鉄高値,トランスフェリン飽和度〔血清鉄/総鉄結合能(TIBC)×100(%)〕の増加(>45%)など,体内鉄総量の増加を示す所見が認められる。
【2】組織鉄に関する検査
❶鉄過剰症の診断は,肝生検による肝鉄濃度(LIC)の測定が最も信頼性が高く,LIC>7mg Fe/g乾燥肝重量で臓器障害のリスクが増大する。肝組織でプルシア
関連リンク
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/ヘモクロマトーシス
- 今日の治療指針2023年版/二次性貧血
- 臨床検査データブック 2023-2024/血球計数 赤血球数〔RBC〕血色素量《ヘモグロビン〔Hb〕》ヘマトクリット〔Ht〕網赤血球数〔Ret〕 [パニ][保]*
- 臨床検査データブック 2023-2024/エリスロポエチン〔EPO〕 [保] 209点(包)
- 新臨床内科学 第10版/2 ヘモクロマトーシス
- 新臨床内科学 第10版/1 ヘモクロマトーシス
- 新臨床内科学 第10版/【2】鉄欠乏性貧血
- 新臨床内科学 第10版/【14】慢性疾患に伴う貧血,腎性貧血
- 新臨床内科学 第10版/3 腎性貧血
- 今日の診断指針 第8版/鉄欠乏性貧血