ビタミンは,体外より摂取する必要のある必須の栄養素であり,歴史的には欠乏症状が先に知られ,それを改善する小分子として発見された。ビタミン欠乏症は,現代日本社会においてもみられ,その臨床像を理解し,鍵となる症状をみたときに鑑別診断としてビタミン欠乏症を思い浮かべることが重要である。参考のため,ビタミン欠乏症・過剰症を表1図にまとめた。
診断のポイント
【1】小児および高齢者。
【2】やせ,高度肥満。
【3】偏食,食事制限。
【4】胃・腸管切除,慢性下痢など吸収不良患者。
【5】ビタミン欠乏症を念頭におくこと。
緊急対応の判断基準
【1】心不全徴候
❶ビタミンB1欠乏時にみられる。高拍出量性心不全を呈し,集中治療管理が必要。
❷浮腫も高度なことが多く,知覚麻痺を伴う。
❸悪化すると乳酸アシドーシスを伴い,致死率が高い。
【2】けいれん
❶適切な問診と血液検査を行う。ビタミンD欠乏症では低カルシウム血症からテタニー,全身けいれんに至ることがある。
❷ギンナンは,ビタミンB6の拮抗物である4'-メトキシピリドキシンを含むので,その摂取により乳児ではけいれんが起こる。
❸どちらの場合も一般的な鎮痙薬の使用のみでは対応が難しいので,原因に対する治療を行う(低カルシウム血症の是正,ビタミンB6投与)。
症候の診かた
さまざまな皮膚症状を伴う。
【1】乾燥,角化(ビタミンA欠乏症)。
【2】口唇の鱗屑と口角のひび割れを伴う皮膚炎(ビタミンB6欠乏症)。
【3】点状出血,創傷治癒遅延(ビタミンC欠乏症)。
【4】日光照射を受けた部分の痛みを伴う紅斑性発疹(ナイアシン欠乏症,ペラグラ)。
【5】アトピー性皮膚炎(食事制限によるビタミンD欠乏)。
【6】広く皮膚炎(ビオチン欠乏症,生の卵白に含まれるアビジンと結合し不活性となるので,卵白障害時にも)。
検査所見とその読みかた
【1】貧血
❶巨赤芽球性貧血(ビタミンB12や葉酸の欠乏症)
■悪性貧