診断のポイント
【1】乾癬の皮膚病変
❶皮膚病変の発症と同時期に関節症状も発症することが多いが,10年以上経ってからの発症も少なくない。
❷皮膚病変は,頭皮,爪病変などが関節炎合併との相関が強い。
❸10%の乾癬性関節炎では付着部炎・関節炎が先行するが,乾癬の家族歴があることが多く,家族歴がなくとも関節炎のみでなく付着部炎・指炎の存在が診断に役立つ。
【2】関節所見
❶関節炎のみでなく,付着部炎もしくは指炎があることが他の関節炎との鑑別に役立つ。
❷DIP関節炎では,変形性関節症との鑑別が問題となるが,通常の変形性関節症では炎症所見が乏しいこと,びらん性変形性関節症でも関節面中心を含む軟骨破壊の著しいことなどが異なる。
❸乾癬性関節炎では,3分の1で脊椎関節炎を合併するが,末梢関節炎がなく脊椎関節炎のみという症例はほとんど存在しない。しかし,強直性脊椎炎のように仙腸関節からの連続上行性病変ではなく,頸椎炎のみのことも多く注意が必要である。下部胸椎から上部腰椎の病変では変形性の変化との鑑別が重要である。
【3】分類基準
❶一般的にCASPAR分類基準が臨床試験の組入基準などに使用されている(表1図)。
❷しかしながら,変形性関節症の傍関節骨新生との区別を慎重に行う必要があることで特異度に影響があること,抗シトルリン化ペプチド(CCP)抗体ではなくリウマトイド因子が未だに使用されていることなど課題も多く,他の分類基準と同様に臨床の場で診断に用いるべきではなく,あくまで乾癬性関節炎に合った病態を患者が呈しており,同様の所見を伴う他の診断を除外して診断を行う。
緊急対応の判断基準
【1】乾癬性関節炎の保険診療は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬,抗IL-17抗体などの生物学的製剤である。
❶NSAIDs:出血性消化性潰瘍のリスクがあり黒色便などがあれば,緊急内視鏡検査などが必