診療支援
診断

■感染性疾患の最近の動向
門田 淳一
(大分大学教授・呼吸器・感染症内科学)


 国内外において最近特に注目され危惧されている感染性疾患領域のキーワードは薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)である。2016(平成28)年に三重県で開催されたG7伊勢志摩サミットでも取り上げられ,わが国でも国家的戦略としてAMR対策がなされてきている。その中心がantimicrobial stewardship(AS),すなわち抗菌薬適正使用であり,2018年度の診療報酬改定においてAST(抗菌薬適正使用支援チーム)に100点の診療報酬が新設され,その実践が強く求められるようになっている。このような方向性は細菌に限ったことではなく,ウイルス性疾患や真菌症など他の微生物にも当然当てはまることであり,薬剤耐性対策の徹底が国家規模で進められている。

 抗微生物薬の開発が遅々として進まない現状のなかで,抗微生物薬を適正に使用するためには正確な診断が重要であることは言うまでもない。そのなかで最近,diagnostic stewardshipという感染症診断を支援する活動が登場した。Diagnostic stewardship活動の中心は分子生物学的手法を用いた新規の微生物検査法であるが,LAMP法,リアルタイムPCRやデジタルPCRは簡便で迅速性に優れており,すでに結核,レジオネラやマイコプラズマなど体外診断用医薬品として保険収載されているものも多い。特に複数の病原微生物あるいは病原因子が検出可能なマルチプレックスPCR法は菌種の特定と耐性遺伝子の同時検出が可能となっている。そのほかに網羅的な細菌叢解析手法としてクローンライブラリー法,ブロード・レンジPCRや次世代シークエンサーの開発・実用化も進んでいる。さらに,菌種の同定を行ううえで従来法と比較して同定精度や迅速性に優れている質量分析法(MALDI-TOF)が広く用いられるようになってきている。

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